「今回は違う」、あまりに広く知られた言葉ですが、10月から政府機関が閉鎖されるなら、金融市場関係者だけでなくFRBが頭を抱えてしまう問題が浮上します。
前回、2018年12月から2019年1月まで政府機関が閉鎖された当時は、35日と過去最長に及んだものの、商務省を始め農務省、国土安全保障などの他、米労働省も2019年度末までの予算が割り当てられていた結果、一部の閉鎖にとどまりました。
ここが今年と大きく異なる点であり、当時は米労働省下の米労働統計局(BLS)を始め米商務省下の米経済分析局など、経済指標のリリースを継続できたものです。しかし、今回は年度初めの予算が全く成立してないだけに、2013年10月と同様に、BLSを始め統計局は経済指標を公表できない可能性が高いと警告しています。
仮に政府機関が閉鎖されるならば、10月3日の米8月雇用動態調査(求人件数など)、10月6日の米9月雇用統計、11日の米9月生産者物価指数(PPI)、12日の米9月消費者物価指数(CPI)を始め、10月17日の米9月小売売上高、10月26日の米Q3実質GDP成長率、10月27日の米8月PCE価格指数など、Fedの今後の金融政策を占う上で重要かつ必要なデータの公表が先送りされてしまいます。
FRBは米連邦政府から独立し独自で予算を組んでいるだけに、9月FOMCの議事要旨は10月11日に無事リリースを迎え、10月31日~11月1日開催のFOMCも予定通り開催される予定です。ただし、2013年型の全面的な政府機関閉鎖が長期化すれば、データなしでFOMCを迎える羽目になってしまいます。パウエルFRB議長が「データ次第」と強調するだけに、そうなれば11月FOMCで利上げを決定する可能性は極めて低いと言わざるを得ません。
前回、BLSなどがデータを公表できなかった2013年10月、閉鎖期間は16日でした。その間、米9月雇用統計始め経済指標のリリースが実際に後ろ倒しされたものです。当時を振り返ると、米9月雇用統計は10月4日(金)予定のところ、約2週間遅れの10月21日(月)に発表されました。米9月CPIも同様に10月16日(水)発表予定のところ、10月30日(水)とやはり2週間のずれが生じています。
つまり、政府機関の閉鎖が約2週間半以上も続くならば、9月の米雇用統計と米CPIのデータを確認できず、据え置きを決定せざるを得ないと考えられます。
問題は、それだけではありません。2013年当時は10月だけでなく翌月も経済指標のリリースが後ずれし、米10月雇用統計は11月1日(金)→11月8日(金)、米10月CPIは11月15日(金)→11月20日(水)へシフトしていました。
政府機関が実際に閉鎖に陥れば、FRBの金融政策を占うことができず、金融市場のボラティリティが高まるリスクをはらみます。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年9月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。