中国共産党の幼稚な「飴と鞭」

習近平国家主席 中国共産党新聞より

中国内外の混迷

ここ数年、中国海警局の領海侵入が常態化していることは周知だが、これらの背景にあるものを邪推しながら、日本はどうあるべきかを考察してみたい。

尖閣沖 中国海警局の船2隻が領海出る 25時間余にわたり侵入

尖閣沖 中国海警局の船2隻が領海出る 25時間余にわたり侵入 | NHK
【NHK】23日午前、沖縄県の尖閣諸島の沖合で日本の領海に侵入した中国海警局の船2隻は、24日午後、いずれも領海を出ました。

9月19日には日本のEEZ内で中国が設置したと見られる海上ブイが発見され、松野官房長官が明らかにするという事案が発生した。

中国、日本のEEZ内に海上ブイ設置 松野長官明らかに

中国、日本のEEZ内に海上ブイ設置 松野長官明らかに
松野博一官房長官は19日午後の記者会見で、日本の排他的経済水域(EEZ)内で中国が新たに海上ブイを設置したとして、中国側に抗議した上でブイの撤去を求めたと明ら…

一方、中国経済の流動性の要であった不動産投資会社の恒大集団が再建に向けて新規債権の発行を目指していたが、困難であると発表し、中国の不動産市場の窮状が改めて浮き彫りになっている。

中国恒大、当局調査で新規の債券発行困難に 債務再編案に影響

中国恒大、当局調査で新規の債券発行困難に 債務再編案に影響
経営再建中の中国不動産大手、中国恒大集団は24日、子会社の恒大地産集団が当局による調査を受けているため「新規債券発行の適格基準を満たしていない」とする声明を発…

これらは習近平が内政問題解決に向けて打つ手を失いつつあることを露呈しているとも言えるだろう。恒大集団のみならず、中国の不動産大手である碧桂園控股は、今後1年間に日本円で総額2兆円規模の債務返済を抱えており、ドル建て債や国内向け債権の返済が次々に迫っている。

碧桂園控股は手元流動性(現金)は約2兆円程度は確保していると強気の姿勢を見せているが、対ドル人民元は上昇に歯止めがかかっておらず、今後、手元現金が予想を上回るペースで減少することが考えられている。

情報BOX:中国不動産大手の碧桂園、債務危機のポイント

情報BOX:中国不動産大手の碧桂園、債務危機のポイント
- 中国の景気減速が世界的に市場を揺るがしているが、同国経済は約4分の1を不動産セクターが占める。そのため不動産最大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)の債務危機は注目の的となっている。複数の関係者は2日、碧桂園が債権者から人民元建て債の返済延長の承認を得たと明かした。

これは碧桂園控股に限ったことではなく、恒大集団に続き、今後、他の不動産大手に波及することが問題視されている。

上海に拠点を置くアパマンショップベターハウスは、上海を中心にコロナ禍で大きく減少していた外資系企業の物件登録件数の増加が顕著であると報じているが、現実にはコロナ禍前に戻るには更に長年月を要する見込みだ。

1~8月 中国新規外資系企業が33%増

以前に拙稿でも触れさせていただいたように、中国の国内経済における流動性の要であったのが不動産投資であり、その屋台骨を支えていたのが、地方における個人資産の不動産投資だ。

中国人は預貯金や株式投資ではなく利回りの大きな不動産投資に資金を投じていて、それらを使って地方のインフラ整備、不動産会社の債権購入による過剰な住宅建設を行ってきた。これらが不動産業に関わる人たちへのトリクルダウンになっていたのだ。

中国経済は曲がり角ではなく行き止まりにいる

中国国民は不動産価格は上昇し続けるものだと思い、また、自分の購入した不動産がお金を産み続ける投資資産であると思ってきた。

それが僅か10数年で弾けてしまったことになる。

これは噂の域を出ないが、中国国内には既に人口の数倍の住宅が存在していると言われていて、その殆どがただマンションの外殻だけを建設しているだけと言われている。

また不動産への先行投資、地方債、企業の社債、個人のローン、地方行政区のインフラ整備、中央政府のIT産業関連の企業融資、シャドーバンクの負債を含めると誰もその実態を掴んではおらず、中国経済全体の負債総額は実に1京円を軽く超えているとも言われている。

問題はこの負債を誰が払っていくのか?ということだ。

国内経済の屋台骨を支えてきた不動産投資に関しては、巨大な不良債権が重圧となっており、中央政府が人民元を発行して助けるか?と言われれば、その可能性は限りなく低いと言わざるを得ない。

中国がデフレに突入した国内経済のテコ入れをするには、政府支出しかないのだが、そもそも習近平とその周辺は、資本主義経済と金融政策を熟知しているとは言い難く、中国の国債発行で資金調達する頭は無いだろう。ましてやこれまで市場の金融機関の多くは不動産投資に預金を回しており、地方政府の債権保有が不良債権化する可能性が極めて高い。

金融機関の地方債への投資、インフラ整備と不動産への投資、不動産は建設前の資金調達で新たな不動産建設という循環で市場のマネーを循環させていたのだが、繰り返すがそれは不動産価格が上昇し続けるという大前提があるから。

ゼロコロナという最もやってはならない愚策を執ったことで、より国内経済のデフレに拍車をかけてしまった中国政府は、禁じ手の国債の直接引き受けの手段に出ている。これが世に言う財政ファイナンス。つまり、中国政府が発行した国債を中央銀行に直接引き受けさせ、発行した人民元を地方にばら撒くと言うことをやった。

中国、地方に2兆元支給へ 資金の流れ把握し企業・住民を支援

中国、地方に2兆元支給へ 資金の流れ把握し企業・住民を支援
中国の許宏才財政次官は12日、中央政府が特別国債の発行や財政赤字の拡大を通じて地方政府に支給する2兆元(2820億ドル)について、直接自治体に資金が行き渡る体制を整え、困窮している企業・住民を支援すると述べた。

今の中国で残されているのは、この手段しかない。

これは著しい国債の高騰を招く恐れがある。つまり、今の不動産投資の不良債権化を解決するには、政府が直接介入して不動産会社を国有化し、国債を乱発して人民元を大量に発行するしかない。これが、スタグフレーションを生む大きな要因だ。

民主主義国であれば、国債を一旦、市場で売り出し、市場から中央銀行が買い上げると言う手法をとる。つまり国債金利を市場がコントロール市場原理に基づいて政府の過度な政府支出の乱発が抑制される。ところが中国がやろうとしている国債の直接引き受け、財政ファイナンスだと、政府の負債を紙幣の乱発で賄おうとするから、当然、過剰な資金供給となる。

また、市中の金融機関は、不動産への莫大な投資が響いて、国債を買いたくても買うお金が無い為、そもそも国債の金利を抑制する市場原理が働く余地が無い。

したがって、政府は国債を直接中央銀行に買わせ、それで得た人民元をそのまま地方にばら撒く付け焼き刃しか、選択肢が無いことになるのだ。これが今の中国政府の政府債務が急上昇している原因とも言えるだろう。

以後、

  • 誰も幸せにならない仕組み
  • 幼稚な習近平よ何処へ行く

続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。