投資が生み出す日本経済の復活シナリオ:日本が目を覚ます時がきた

楽天が四半期決算をするたびに世の経済コメンテーターは鬼の首を取ったように「ほら言ったこっちゃない。こんな借金してどうするのだ」と総悲観論になります。私は三木谷氏が携帯事業に参入する時、「止めた方がいい」と明白に否定したのは今のこの苦しみが初めから想定できていたからです。

楽天グループの三木谷三木谷浩史会長兼社長 同社HPより

但し、最近はそう思っていないのです。それは楽天だけが展開する通信機器のクラウド化でこのノウハウを世界で売りまくっているからです。三木谷氏は確かに当初は国内携帯事業への参入で楽天商圏の飛躍的拡大の「血管機能」としての携帯事業を考えていたはずです。が、そもそも人口減少の日本で完全に成熟化した携帯の通信産業に於いて市場の拡大がたやすくないのは賢い三木谷氏なら初めからわかっていたはずです。

その為にシステムそのものを世界初という切り口で安い投資で確立できる仕組みを日本で作り上げ、その実例をもとに世界に売り込むという世界の通信市場を視野にしたビジネスに舵を切っている、そこを多くの経済コメンテーターはスルーしてしまったのです。私が2か月ぐらい前の四半期決算発表時にソニーと楽天なら楽天が買いだと思うとこのブログで述べた時は同社株は400円台まで下げ、ドツボ状態でした。今は600円台を回復し、上昇基調にあります。このポイントは三木谷氏が経営者人生をかけて突っ込んだ投資です。日本はずっと投資がしょぼかったのです。ですが、ようやくそれに目覚め始めた、そんな時代になってきたのです。かつて孫正義氏が通信モデムを無料で配りまくった時、「あんな大赤字でどうする」といったのと同じです。

コロナ期に稼ぎに稼いだ海運大手。日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社が21年と22年に稼いだ利益の総額は5兆円弱。さすが今期以降は平常時に戻るため、利益は昨年比8割、9割減となるものの2年間で手にした5兆円が投資に廻ろうとしています。各社、クルーズ船投資にシフトするほか、日本郵船は物流会社の買収などで事業の垂直展開を図りより効率的な物流を目指します。これらの投資マネーは必ず循環するため、日本国内に新たな景気の波を呼び起こします。

日経は「日本郵政、不動産に大型投資 全国20カ所超で再開発」と報じています。典型的な箱もの投資ですが私は評価しています。日本がバブル崩壊以降、30年以上も箱もの投資に二の足を踏んでいた間、森ビルや三井、三菱系、更には渋谷再開発の東急系などごく一部の企業による再開発にとどまっていました。が、東京や大阪、名古屋をはじめ日本は都市に人口が集中しており、都市開発は地方を含め常に新陳代謝を繰り返す必要がありましたが、それが30年以上、足りていなかった時代を経ています。福岡、札幌、仙台の今後の成長のポテンシャルは相当あるとみています。つまり、30年間放置してボロくなっていたのです。星野リゾートが躍進出来た背景とはボロで昔の経営体質を変える取り組みが出来ない旅館業に喝を入れたからこそ、着目されたのです。

今、銀行株が大復活を遂げようとしています。金利が上がれば銀行利益は嫌がおうでも増えます。銀行が儲かるということは貸し出しに積極的になるということなのです。今まで低金利⇒銀行儲からず⇒貸出に慎重⇒日本経済の活性化にブレーキというシナリオに日銀も政府も見て見ぬを振りだったのです。

投資が増え、新規事業が増えれば当然人がいります。新規採用は人口減の中、当然、奪い合い、ついては自動的に給与は上がるサイクルに入るのです。この極めて大きな経済のサイクルがようやく動き始めそうな気配になってきたのです。それもこれも今、我々が経験している我慢が限界を超えた値上げこそがその殻を破ったとも言えます。

かつてのアメリカは日本が邪魔者でした。なぜなら高性能なものを安く作れたからです。今、私が見るアメリカの日本への期待は「中国に負けない技術力と開発力で欧米先進国に出来ないものを日本が分業体制の一環として作り上げてくれ」だとみています。その期待に応えるためにも日本は目を覚まし、起き上がり、立ち向かうチャレンジをする時がきたと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月29日の記事より転載させていただきました。