首相、岸田文雄の3年目:在任1000日という金字塔も見えてきたが…

岸田氏が首相になってから10月4日で3年にはいります。岸田氏が長期政権だけを目指すなら少なくとも次の自民党総裁選のある24年9月まで首相の座に留まることが可能です。その総裁選で勝てば更に長くなることも可能です。もちろん、解散の噂はいつの時代にもあるのですが、先日も申し上げたように大義がない解散は国民の不評を買うだけです。

岸田首相 uschools/iStock

現在在任2年ですからほぼ730日。戦後の首相の任期で1000日以上は長い順に安倍、佐藤、吉田、小泉、中曽根、池田、岸各氏の順番です。仮に来年9月まで首相に座れば在任1000日という金字塔となり、日本の歴史に名を連ねることになるのでしょう。が、過去在任1000日以上の方々はそれなりに功績があり、教科書にも出てくるような指導者としての足跡を残しております。

では岸田氏の足跡は何処にあるのでしょうか?

個人的に記憶にあるのはコロナからの解放、旧統一教会問題、LGBT法案、少子化対策でしょうか?外交的には韓国、尹錫悦大統領との親密な関係を築き、関係修復を図ったという点です。バイデン氏とはよくやり取りをし、会談も多いのですが、これといった目立った成果はなかったと思います。広島G7サミットが印象深いですが、G7そのものの色合いは薄く、むしろ、ゼレンスキー氏が訪日したことでバラエティパッケージのような色彩となりました。

経済に関しては評価する向きもあるのですが、岸田氏が何かをしたというよりたまたま時の風が吹いてそれに乗じたというのが私の見方です。例えば賃金が上昇したのは岸田氏が経済団体に働きかけたというより人材不足とインフレで従業員からの強い圧力がそうせざるを得なくなったという結果論です。

賃金の上昇については日銀の植田総裁が来年春の賃上げの行方を見守る中で金融政策の正常化のプランを描くということになっています。専門家の植田総裁からしても未だその行方は読めないということなのでしょう。とすれば岸田首相は来年も継続的に賃上げがなされるべく構造的賃上げ策を掲げていますが、さて、実効性とその効果はどうなのでしょうか?個人的にはあまり期待していないです。

オバマ元大統領の時代、経済には疎いとされていたにもかかわらず、ずっと景気が良く、国民からの不満が少なかったことを覚えていらっしゃるでしょうか?ある意味、世界的に無風時代で誰が何をやってもうまくいく時だったのです。その中で経済が好調で株価が安定的に上昇する流れがあれば時のトップが誰であってもうまくいく、これがほぼ鉄則といえます。

故に安倍元首相がしきりに経済対策と述べていたのも景気は「政権維持の特効薬」なのです。極端な話、外交なんてどうでもよくて本国のことだけに注力していればそれで政権は評価されるとしても過言ではないのです。ではなぜ、一国のトップは外交がお好きなのか、といえば華やかでかつトップとして比較的自由度をもって対応できる唯一のエリアだからです。

では岸田氏が尹大統領との関係改善は岸田氏の成果か、といえば私はそうではなく、尹大統領の最大の外交方針であり、韓国国内の反対派を押さえつけてでも日本との関係を再構築しようとしたのです。原発処理水でも韓国はいち早く日本の方針に同意をしました。岸田氏がスムーザーとして存在はしていますが、ドライビングフォースではないのです。

岸田氏の外交方針は風見鶏的なところがあり、G7議長国としてウクライナに行かなきゃといった受験の際の「試験対策」的要素が見え見えでした。個人的には安倍元首相がトルコのエルドアン大統領と何度も会談して関係を構築したのに対して、岸田氏は難しい国との外交は避けている点で外交の岸田とは言えないのだろうと思います。私が外交で今、一番の凄腕を上げよといえば、中国の王毅氏の右に出る者はいないでしょう。

岸田氏は政策より自分の立場と評価をとても気にする方でまるで「ナルシスト」のような感じがします。日経に岸田首相は散髪好きで一年で23.6回も床屋に行ったそうです。月2回です。「髪が抜けるほど苦労をする」と言いますが、岸田氏は地毛が伸びるほど首相の座を満喫しているのかもしれませんね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年10月5日の記事より転載させていただきました。