私達は「戦争の時代」をどう生きるのか

10月20日から臨時国会が始まりました。12月13日までの予定です。

朝の議員団総会で久々に参議院自民党議員が集まりました。私は引き続き外交防衛委員会に所属します。また、党では、副幹事長、国防部会長代理などに就任しました。課題山積ですが、誠心誠意取り組んでまいります。

また、自衛隊殉職隊員追悼式の事前献花に行ってまいりました。国家国民を守るため日々我が身の危険を顧みず任務を全うし、その中で殉職された自衛隊員の方々に心からの感謝と哀悼の誠を捧げます。

空軍司令部で指揮を執るイスラエルのネタニヤフ首相 同首相SNSより

さて、ロシアによるウクライナ侵略、米中対立の中で深まる台湾をめぐる緊張だけでも大変なのに(北朝鮮の核ミサイルも)、中東も危険な状態になってきました。中ロ連携、北朝鮮のロシア接近など、日本周辺は面倒なことになっています。日本自身が強くなること、そして多くの仲間を作ること、そして、中国とも首脳レベルはじめ直接意思疎通することなど、本当にやるべきことが山積しています。

ハマスによるイスラエル攻撃は、イスラエルにとっての「9.11」であり、イスラエルは自国を守るための措置を取るのは当然だと思います。ただ、ハマスを排除せんとする過程でガザの無辜のパレスチナの民間人が犠牲になることは避けなければなりません。その意味で、ガザの病院「爆破」で500名もの人々が犠牲となったことは、この「紛争」を局地的に封じ込めることができるかどうかに大きな悪影響を及ぼしています(ハマスは国家主体ではないので「紛争」と鍵括弧をつけておきます)。

病院「爆破」がどの主体の仕業かについては確たることはわかっていませんが(個人的には、イスラエルが攻撃することは全くイスラエルの利益に反するのでイスラエルが意図的にやることはあり得ないと思いますが)、結果として、多くのアラブ諸国がイスラエルに対する反感を強めることとなってしまいました。隣接するレバノンのヒズボラがイスラエルを攻撃する可能性も出てきましたし、イランも「看過できない」旨述べています。

とはいえ、本当は、サウジもイランも米国も、関係する大国達は誰もこの「紛争」が拡大することを望んでいないでしょう(米国の力が中東に割かれて自国に向けられるエネルギーが低下することを望むロシアや中国は別かもしれませんが)。

それでも、望んでいないのに戦争に引きずり込まれることはあり得るというのが歴史の教訓です。だからこそ、今こそ、この「紛争」が拡大しないように封じ込めるためのあらゆる国際的外交努力がなされなければなりません。実際、米国をはじめ活発に関係国に自制を求める外交を展開しています。

ハマスがこのタイミングでイスラエルを大規模攻撃したのは、イスラエルとサウジの和解が進み、「パレスチナ問題」が置き去りにされることを恐れたためだと思いますが、ハマスもイスラエル相手にここまで「戦果」が大きくなることはもしかしたら予想外だったのではないか、とも思います。

ともあれ、結果的に、①サウジとイスラエルの関係改善の流れは大きく水をさされましたし、②「パレスチナ問題」は置き去りにできない、ということをはっきりさせたという意味では、ハマスは目的を達成したのかもしれません。

と、同時に、米国が中東関与を弱める中で起きていた中東における地殻変動、すなわち、イスラエルとサウジの関係改善の流れも中長期的視点でみれば実は変わらないのではないかとも思います。

石油依存を脱したいサウジにとっても技術先進国のイスラエルとの関係改善は望ましいことでしょう。ただ、その流れを変える変数は、イスラエルが当然の権利としてではあるもののハマス排除の過程で図らずも余りにも多くの犠牲をパレスチナ人に生じさせた時には、この流れをふっとばしてしまうのではないかと懸念します。

そして、ガザは余りにも人口密集地帯過ぎて、大規模な地上戦をすれば、民間人に多くの犠牲が出がちな状況。早く国外に避難してもらった方が良いが、周辺国(エジプト)もそう簡単に門を開けられない。イスラエルにとっても、アラブ諸国もイランやレバノンも敵に回すことになり、結果的にイスラエルにとって環境悪化を招くことになります。

イスラエルにとっても、無辜のパレスチナ人にとっても、世界にとってもこの紛争の拡大は何としても避けなければならないと思います。また、できるだけ短期間で収束させる必要があります。

長期化すれば、「泥沼」となり予想しなかったことが起き、望まなくとも関係国が巻き込まれて紛争が拡大する危険が増してしまいます(たとえばヒズボラが発射したミサイルが予想外に大きなダメージをイスラエルに与え、イスラエルに米国がより深く加担せざるを得なくなれば、イランも黙っていないかもしれない)。

そして、既に兆候が見え始めていますが、中国とロシアは、ハマス側(パレスチナ側)に置き、今回の件を「米国の中東政策の失敗」、「欧米の横暴」として喧伝し、グローバルサウスや途上国に訴求し、国際的な立ち位置を有利にしようとしています。

日本にとっても、人道的な意味で、イスラエルの人々もパレスチナの人々にも犠牲が出て欲しくないということのみならず、米国のエネルギーがロシアのみならず中東にも割かれる事態は、インド太平洋、特に東アジアに注力してもらいたい日本にとって、国益にマイナスな事態です。東アジアに力の空白ができれば、台湾有事も誘発しかねません。

また、湾岸諸国にはまだ影響がないとはいえ、中東情勢がさらに不安定となれば石油価格も高騰するかもしれません。日本政府には、イスラエルにいる邦人救出、さらに、中東について日本ができることは限られているかもしれませんが、G7議長国としても、なんとかこの「紛争」が拡大しないよう最大限の外交努力をお願いしたいと思いますし、人道的な支援もやるべきだと思います。


編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏(自由民主党、大阪選挙区)の公式ブログ2023年10月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。