やせ薬の副作用?

歌手の谷村新司さんが天に召された。心よりご冥福をお祈りしたい。

私が外科医として勤務していた1880年に発売された「昴」だが、勤務していた病院や留学当初のユタ大学で、行き詰っていた自分をこの歌を聴きながら励ましていた日々が懐かしく思い出される。

「目を閉じて 何も見えず 哀しくて目を開ければ 荒野に向かう道より 他に見えるものはなし」

「我も行く 心の命ずるままに」

まさに、遺伝的多型マーカーを見つけながら、一歩一歩と染色体地図を作り上げていった1985年から1988年にかけては、荒野を切り開いて道を作り進んで行った時代であった。これがあったからこそ、ポジショナルクローニング(Reverse Genetics)が実証可能となり、全く原因がわからない病気の遺伝子の発見につながった。

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この時代から35年以上の時が経ち、医療は大きく変わった。バイオバンクジャパン(BBJ)プロジェクトを開始するときに、肥満を疾患リストに加えると、文部科学省の担当官に「肥満って病気なんですか???」と鼻で笑われたことがあったが、肥満は万病の元だ。そして、最近では抗肥満薬(やせ薬)に期待が高まっている。

GLP-1 (グルカゴン様ペプチド-1)というホルモンで、食欲を抑えるようだ。21%も体重が減った人もいる。しかし、どんな薬でも副作用がゼロのはずがない。現に、消化管障害や筋肉量の低下が起こっているようだ。

企業によると、筋肉量の低下は、筋肉内の脂肪が減ったためで、筋肉細胞が減ったのではないそうだ。霜降り肉と赤身肉の違いのような感じだろうか?いずれにしても、肥満も運動やカロリー制限から、薬でやせる時代になってきたようだ。繰り返すが、万人すべてに安全な薬はないことに気を留めてほしい。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年10月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。