子持ちの親が離婚で人生詰まないためのスキル

黒坂岳央です。

人生はいつでもあっさりと悪い方向へ狂ってしまうことがある。自分はそういう事例はかなり見てきたつもりだ。店舗開業した直後にコロナが来て借金だけが残ったビジネスマン。何十年もコツコツためた資金を個別株全力買いで一瞬で失う素人投資家。そして、幸せな家族生活を送っている時に離婚がきっかけで一気に人生が八方塞がりになってしまう子持ちの親である。

前者についてはリスクコントロールでなんとかなる。だが、子持ちの親が離婚がきっかけでいきなり人生が詰むパターンはある種、防ぎようがないところもある。

子持ちの親が突然の離婚で人生を詰まないために必要なスキル、それはリモートワーク力だと思うのだ。

miya227/iStock

経済的に厳しい子持ちのシングル

自分はシングルの子持ち家庭には特別な温情をかけたい気持ちを持っている。離婚の原因は本人に落ち度はないことも多い。

実際に見てきたパターンとしては、「会社に行ってくる」といったまま失踪したり、配偶者の病死や事故死、浮気が発覚するというものである。よく「結婚する前に相手の本性を見極めないあなたの責任だ」という話があるが、人の価値観はドンドン変わるので予測は困難な上、病気や事故などは防ぎようがない。離婚で人生が詰むのは本当に気の毒としか言いようがない。残された本人もそうだし、何より子供がかわいそうだ。当然、子供ができた時点では二人で育てていく前提で人生戦略を構築しているので、片方がいなくなると一気に破綻してしまうのだ。

心情的には気の毒だが、現実的には子持ちシングルへの風当たりはかなり厳しい。正社員採用を目指したり、資格取得を頑張ったりしても企業は簡単には受け入れてくれない。面と向かって「あなたは会社のお荷物になりそうだから採用はしません」なんていう人はいないだろうが、内心リスク忌避を計算して採用を見送ることにするパターンは多いだろう。子持ちシングルは子供が急に熱を出して急な休みや早退に加えて、緊急で休日出勤をして対応することも期待できない。人事担当者は採用後に配属先の現場からクレームが来ることを恐れるので、リスクヘッジにインセンティブが強く働いてしまうのだ。

そして子持ちだと学校や塾などの物理的な移動距離を考えると働く先は自ずと近所に限定されてしまう。こうなるとキャリアの幅も狭まる。日中は会社で疲労し、帰宅後は家事や育児で疲労するので休む暇もない。トラブルがあっても相談する相手もおらず、孤独感も強まる。

子持ちシングルは離婚がきっかけで、いきなり大変厳しい状況に置かれてしまうのだ。

リモートワークで可能性は広がる

しかし、子持ちシングルが起死回生の一手を講じる手段がある。それがリモートワークである。

リモートワークは主に能力主義、成果主義の色彩が強い企業で採用されるワークスタイルだ。そのため、家で突発的に子供の面倒を見ることがあっても成果を出せるなら眉をひそめられることは少ない。具体的にいえば、プログラミングや翻訳、デザインや動画編集といった職種である。こうした職種は工場の流れ作業と違って労働集約的ではない。サラリーマンでもそうだが、特にフリーランサーにおいては成果物の質と量が評価のすべてとなる。育児のハンディは少々あっても、かなり限定的になる。

また、何より大きいのが出退勤が不要という点だ。筆者の知人の子持ち親は仕事が終わったら慌ただしく帰っていく。学童に預けていた子供を引き取ったり、塾への送迎が待っているためだ。だから学校、職場、家のトライアングルの物理的距離は制約が強い。しかし、リモートワークによってこのトライアングルを家と学校だけにできるなら、制限はかなり緩和される。キャリアの幅も広げられるだろう。

子持ちになる前の段階から、現職をリモートで提供できるスキルを持っておくと強力なリスクヘッジになるだろう。また、フリーランサーなら複数の仕事をリモートでかけもちして、それぞれ単体で最低限の生活ができる収益を作ることができれば、子供の成長に応じて仕事量のコントロールもできる。

また、これは極端な例だが、子持ちシングルになってからブロガーやYouTuberで収益を得るようになったり、FXや株のトレードで経済力を維持する事例もある。こうした仕事もリモートワーク力を活用できるといえるだろう。

人生一寸先は何があるかわからない。だからパソコンやスマホの重要データのバックアップを取る感覚で、収入源やワークスタイルもバックアップを取っておくことを勧めたい。特に子持ちの親となると、自分ひとりの人生では済まなくなる。万が一の備えの一つとして、リモートワーク力は強い味方になってくれるはずだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。