ノーベル賞ウィークでしたが、吉報はもたらされませんでした。事前の予想リストには若干名の日本人の名前もありましたが今じゃない感じでした。数年のうちにはまた1つ2つぐらい頂けると思いますが、研究予算が少なすぎて日本のノーベル賞受賞の可能性は下がってくるのは必至でしょう。文学賞ですが、個人的には村上春樹氏がとれるとは思わないです。彼の作品はだいぶ読んでいますが、90年代のテイストで止まっていて一部のファン層好みから脱却できていないと思います。だけど書物の読み手が減ったからか、新たな作家も育っていないですよね。残念です。
では今週のつぶやきをお送りします。
やっぱり魔の10月?
こんな予想は当たりたくないですが、マーケットは引き続き弱いとみています。本日発表のアメリカ9月度雇用統計が事前予想の17万人のほぼ2倍になる33.6万人で着地、雇用は強いと理解されています。そうではなくて働かないと食べていけないだけの話で物価高の唯一の対抗策はカウチポテト族がいやいや職場に復帰せざるを得ないのです。カナダの9月雇用統計も事前予想2.5万人増に対して6.4万人増で着地です。アメリカやカナダでは住宅ローンが払えないというニュースが連日大々的に報じられており、賃貸住宅も驚くほどの賃料になすすべがない感じです。
経済の体感はレストランの入り具合やスーパーマーケットのショッピングカートの購入する分量、飛行機の価格など統計数字で出てくる基礎となるものから変化を読み取ります。北米では景気のソフトランディングVSハードランディングが論じられていますが、個人的には軟着陸は想像しにくいところにあります。今の中央銀行は物事をあまりにシンプルにとらえすぎており、経済を壊すまで「利上げしなくちゃだめだ」と述べる政策委員の発言に振り回されてしまっています。
注目はドイツの不動産市場のメルトダウンで大手のゲルヒ グループも破産しました。今年半ばぐらいからドイツ経済は厳しいとされていましたが不動産市場の崩壊は回復に極めて時間がかかるため、相当深刻で連鎖するきっかけになるかもしれません。不動産開発業者は青色吐息でここバンクーバーでも大手デベロッパーでスタッフがごっそり抜ける話があちらこちらであり、当面大規模開発は見送られる公算が高いとみています。
鈴木宗男氏のロシア訪問の是非
維新からメディアまで食って掛かるように鈴木宗男氏の無断のロシア訪問を糾弾しています。お前はどう思うのか、と言われれば「行ったことは勇気ある行動、但し、無断渡航はダメ。戦争でどちらが勝つという発言も主観的で無意味」ではないでしょうか?日本はある大方針が出るとそれに従い、例外を許さない「閉ざす」国です。例えばアメリカは中国との関係を閉じているかといえば全然閉じておらず、コミュニケーションをもって着地地点を探し続けています。政治家が国家間の論点と解決策を探そうとするのは当然の帰着です。
宗男氏は参議院には事前報告しており、今回問題になっているのは日本維新の会への党の報告がなかったこと。無断で行かざるを得なかったのは党の了解が取れる雰囲気がなかったからかと思います。故アントニオ猪木氏が北朝鮮にずいぶん訪問しました。彼は議員外交を目指し、それこそ体を張って議員としての使命を果たしてきたわけです。(否定的な意見が多いのも知っています。)韓国や中国との関係でも政府レベルと同時に議員レベルでの交流も培わねばならないのですが、時として国家間の冷たい風に阻まれるわけです。しかし、議員はそれをするのも仕事なのです。一般人とは違うのだという視点が欲しいところです。
維新が彼を除名処分にするなら坂本龍馬も失望するだろうと言わざるを得ません。党が反省すべきことはないのでしょうか?あれだけ熱い男をうまく使い、守れなかったのかという批判の声が一つも出ないことがむしろおかしいのです。折しもプーチン氏が「日本と対話する用意はある」と述べたのは宗男氏の帰国後です。トリガーは笹川財団の畔蒜氏の質問にプーチン氏が答えた形ですが、プーチン氏の「日本が窓を閉ざした」という発言は重い意味があるように感じます。
リベラルってなんだろう?
アメリカ民主党はリベラル、岸田首相はリベラル寄りと言われますが、リベラルとは民主的制度に守られた経済や市民生活であり、自分と相違する他者に一定の敬意を払うことで成立します。たとえばカナダは多文化主義国家ですが、モザイク文化とされ、市民が持つ様々な背景をモザイクの窓のように捉え、お互いを尊敬するわけです。一方、アメリカはメルトポット文化でアメリカンという一色に染めることを主眼としていましたが、最近はかき混ぜても分離してしまう時代になりました。
ちなみにリベラルの反対語は保守ではなく、権威主義です。今週、バイデン大統領がメキシコとの国境の壁の建設を再開させました。ついに公約を覆した理由は「想定以上の国境破りに手を焼いたから」とされます。この場合は不法越境者に穏便な態度を取ったことで「我も、我も」とアメリカ大陸のはるか南から何千キロも北上して藁をもつかもうとする難民に奇妙な期待感を提示したのです。結局、バイデン氏はギブアップして権威的に壁を作らざるを得なかったわけです。
対中国の外交姿勢はアメリカも日本もリベラルっぽいところと権威的なところの折衷です。日本の権威的な姿勢はアメリカに同調という名の服従型で同盟国内のリベラルとも言えなくはないでしょう。個人的に思うのはリベラルに走り過ぎるとグリップが効かなくなるのです。永遠に人の欲望を聞き続けなくてはなりません。アメリカの自動車業界のストライキもまだひと月はやるでしょう。その後も様々な産業で好き勝手な主張が出てくるはずです。組合が強いのはリベラル主流だともいえます。その点、日本は歴史的には結構、権威主義的な国です。
後記
昨夜、バンクーバーの中国系のビジネスアワードセレモニーに招待されました。BC州の首相も参加していたので久々に声をかけ「日系のビジネスアワードにもよろしくご参加ください」と言ったところ「いつでも呼んでくれ」と政治家らしい答え。一方、私を招待してくれた人曰く、彼も自身の影響力を見せたいから小さいイベントじゃ来ないよね、と。ちなみに昨夜のイベントは300人、お一人様約3万円のチケットです。ブラックタイディナーだったせいか女性のきらびやかなドレス姿だけが印象に残っています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年10月7日の記事より転載させていただきました。