唐突といってよいでしょう。世界最強の諜報機関、イスラエルのモサドですら事前に把握できていなかったイスラム原理主義ハマスによるイスラエルへの攻撃は50年ぶりの被害となっており、今後も戦禍拡大が予想されています。
まだ戦争初期の動きですので様々な予想をするのは困難なのですが、自分なりにシュミレーションをしています。
まず、今回の戦いはハマス側が仕掛けたものでその準備も周到なものでした。更に同様の過激派組織ヒズボラがレバノンからイスラエルの要衝、ゴラン高原に向け砲撃をしたと報じられ、ハマスとヒスボラが連携していたことが分かっています。個人的に想像できるのはこの2つの共通点はイランではないかとみています。
トリガーの一つはアメリカとイランの捕虜交換が9月に行われ、その際に凍結されていたイランの資産60億ドル(一部では200億ドルともされる)がリリースされ、緊張緩和に安ど感すらありました。もともとはトランプ元大統領が凍結した資産でしたが、バイデン政権になりイランへの縛りを緩くしてきた経緯があります。その間、イランは核の開発を進め、アメリカの手のひらの上でコントロールできるような状態ではなくなってしまいました。
とすればイランがこの捕虜交換をずっと待っており、今回のハマスによる攻撃の準備は粛々と行っていたとみる方が正しいように見えます。ハマスが撃ち込んだロケット砲が短時間で数千発にも及んでおり、かつ一部のイスラエル人を拉致しガザ地区に連行するなど実に計画的です。人質はイスラエルが攻撃しにくくするためでしょう。周到です。
イランが後ろで暗躍しているとすればそれは何なのでしょうか?イランと今、連携しているのはロシアと中国です。私が見ているのはアメリカ潰しではないかとみているのです。折しもアメリカ議会は連邦政府予算がなかなか合意せず、挙句の果てにマッカーシー下院議長を解任しており、先行きは見通せません。その問題の発端の一つはウクライナへの支援金問題とされます。
バイデン氏は今回、イスラエルに対して全面的に支援するとしていますが、ウクライナとイスラエル両方に支援することが可能なのか、という単純な財政上の疑問があります。つまりアメリカ民主党という何に対しても平等で優しい政策の足元をみて、アメリカを困らせる政策ではないかと思えるのです。似た例がメキシコとの壁建設でバイデン氏はついに公約を破って建設を開始しています。
イランが巧妙にやろうと思えばもっとできます。極端な話ですが、北朝鮮とイランが繋がっていることからここで連携をされるとアメリカは三面支援が必要となり、物理的に不可能に近づきます。これを狙っているのではないか、という気がします。
ではイランはアメリカを困らせてどうする気なのでしょうか?もしもバイデン政権のポリシーが総崩れとなり、残り1年強の任期を十分全うできないとなれば選挙では共和党が有利になる公算が出てきますのでイランにとってはやりにくいはずです。それとも残り1年の間にやれるだけやっておき、アメリカが仮に政権交代があってもそう簡単に手出しできない強兵策とアメリカに敵対できる外交政策を含めたプランを実行する気なのでしょうか?
イスラエルとハマスの戦いはその点からはどう見ても利用されているとしか思えないのです。数日前のブログでイスラエルとパレスチナの戦いは断続的、ウクライナは継続的と申し上げました。イスラエルとパレスチナはあまりに物理的距離が近すぎるため「継続は壊滅なり」なのです。よって今回の戦いもパレスチナというより原理主義のハマスによる攻撃ですので継続は一般論から考えれば困難でしょう。ただし、イスラエルが徹底的にハマス潰しを行うならそれは泥沼の戦いになるでしょう。
もう1つの視点はウクライナ問題でロシアが形勢を立て直すための時間稼ぎとウクライナへの武器供与を細めることもあるのでしょう。この辺りは全てが繋がっているとみてい良いかと思います。
私はいみじくもパクスアメリカーナの終焉か?と申し上げました。もちろん、アメリカの国力と築き上げたものを考えればそんなに柔ではないと思いたいところですが、30年前のアメリカとはまるで違うのもまた事実です。
仮にそれが起きるなら世界の秩序は非常に混とんとし、不安定な社会となるでしょう。世界経済にも激震が走りやすくなります。人間のエゴなのでしょう。むしろコロナ禍で世界が苦しんでいた時の方が世界平和という点ではおとなしかったということなのでしょうか?
今回の事態はパズルを解くような複雑さがあるように見えます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年10月9日の記事より転載させていただきました。