松川るい議員の「3歳からの幼児教育の義務教育化」に注目

自民党女性局のフランス研修は7月下旬に実施されたが、SNS上の写真をきっかけに大変な注目を集めた。表面的にはネガティブな見方が大勢を占めていたようだが、良識ある人々は否定的な意見とは距離を置いていた様子も観測できた。

騒動自体に対しては、政治家のSNSの利用方法に対する豊富な論点を得つつ政局化することは防いだ点など、筆者としては一定程度の成果があったと考えている。

フランス国会議員との意見交換の様子
松川るい議員SNSより

仏国幼児教育義務化についての松川議員の所感

肝心の研修内容の一部については、10月2日時点で松川議員自身のブログで公開しているが9日現在、殆ど反響がないようである。そのことから「多くのマスメディアは営業上の利益にしか興味が無い」(=報道ではなく視聴数稼ぎが目的)ということがわかる。

改めて松川議員自身の報告に注目すると、松川議員の所感は国政に対して多くの示唆を与えるものである。従って大いにフィードバックして頂きたい。この点だけでも研修の意義は十分あったと考える。

『3歳からの幼児教育の義務教育化(女性局海外研修からの私の所感)』
 10月2日に、今回の自民党女性局海外研修についてブログさせて頂きました。軽率な写真投稿については率直に改めてお詫びするとともに、国民の皆様に対し、「私から」…

当記事ではそこから、筆者が特に注目している松川議員の考えを抜粋・列挙(太字青枠)し、あわせて筆者の考えを述べて行きたい。

(※ なお、筆者は算数・数学に特化した学習塾を運営しているので、偏りのある個人的経験を持つ。したがって、筆者の見解にもまた偏りがあるものと考える。なお、メタ解析ではなくケースに基づくエピソードはエビデンスの信用レベルとしては最低であることに留意して頂きたい。)

松川議員の考え

「3歳からの幼児教育の義務教育化」(略)は、日本にとっても有益な政策と確信できたので、今後とも追求していきたい。

賛成。現状、小学校1年に入学した段階ではすでに大きな学力差(格差)がついている。幼児個人の差もあるが、家庭環境や都市と地方といった保護者世帯所在地による格差も少なくない。

フランスでは、3歳からの幼児教育を義務教育化した結果、教育格差是正の効果、教育水準の向上の成果が見えつつあるとのことであり、日本でも導入を検討する価値がある。

フランスでは地域格差が大きいと聞く。また、日仏間の既存の教育環境の差異も大きいので慎重に検討して頂きたい。

どのような家庭に生まれても自分の人生を切り開く力を子どもに与えるためには、また質の高い幼児教育を「全ての」子どもに提供するためには、「義務教育化」は一つの有効な解決策だ。

同意。異論はない。

義務教育化すれば、まず家庭の金銭的負担はゼロとなり(既に日本でも基本無償化されているが)、待機児童問題も生じる余地がなくなる。

同意。異論はない。

義務教育化すれば、数的概念と国語力(語彙含め)の教育を含む「教育の質」が全国的に義務的に確保される。

同意。異論はない。

算数(数的概念)を幼児期から教えることは余り行われていない。国語と数的概念を幼児期から教えることの重要性については、日本としても多いに参考とすべきである。

同意。言語能力や数的概念の基礎は幼児期に完成しているように感じる(「臨界期」という視点・仮説もある)。

ただし、それらが個人的な資質由来なのか、教育次第で向上できるものなのか、それとも双方の影響を受けるものなのか、筆者には断定する材料がない。

普段小学生から大学受験生まで一気通貫で見ている経験からは、小学3年生頃までに知力のポテンシャルは概ね蹴りが付いているように感じる。つまり、陶器のようにそれ以降肥大させることが難しいと感じる。コンピュータで例えるならば『「一時記憶装置」の容量や「CPU」の演算速度は幼児期に確定し、中学生になる頃にはもうOSの更新やアプリケーション付加で対応するしかない』という感じである。(極めて個人的な見解)

日本も、文科省が、幼児教育に関して、大規模な縦断調査事業を開始しようと考えているとのことであり、これは応援していかねばならない。

同意。ただし、調査の設計には、省益と無縁の専門家を第三者として深く関与させるべきだろう。

親に負担をかけない保育園(0歳から2歳)の在り方についても多いに参考にして国が主導して全国的に導入するべきである。

同意。婚姻世帯において男女ともに職についているにも関わらず、未だ子育ての多くを母親側に依存し女性の負荷が相対的に過大となっている日本では、少子化対策という観点からもとりわけ有意義だと考える。

少子化に苦しむ日本としても、政府は、今般の少子化対策において、孤独な育児ではなく、社会全体で子どもを育てようという姿勢を打ち出したところであるが、個別の政策もさることながら、こうした(フランスの「子育ては大変、親だけではできない → 親を助けるために社会が頑張る」という)考えを根付かせていくことが必要だと考える。

同意。現在議論が進んでいる「こども未来戦略」に対しても、必ずフィードバックされるべき観点である。これこそが、今回のフランス研修に関して最も大きな価値を確信させる考えである。松川議員には、ぜひとも政府・自民党内に強く反映させていただきたい。

むすび

この記事の主題は上記で尽きている。

蛇足ながら正しい理解を深める背景として、人口に膾炙したいくつかの深刻な誤解に言及したい。

悪意の一部メディアと論者が虚偽の情報や推測に基づいてフェイクストーリーを創作し人々に配信し続けた。その結果、多くの人が誤解に基づいて事実から程遠い「虚像」を作り上げて叩き続けていた。一般国民にとっては意図したことではないだろうが、不幸にも「藁人形論法」に陥った状態で非難していたので、事実を確認しておきたい。

補足:フランス研修に関する「いくつかの誤解と事実」

【誤解①】「研修という名の観光旅行」⇒(事実)「研修は党務」

「今回のフランス研修はアドホックかつ恣意的に女性局(長)が企画実行した」ように誤解しているようだがそれは事実から遠い認識である。正しくは「当該研修は、定期的(確か5年毎)に実施される組織としての活動であり、女性局長は党務(仕事)として参加した」というのが事実である。

【誤解②】「大使館が家族の世話をした」⇒(事実)「全くしていない」

「帯同した家族は大使館の世話を全く受けていない」というのが事実である。これは拙記事「 松川るい議員研修「大使館が家族の面倒を見た」証言はデマだ」で詳述したのでそちらをご参照頂きたい。

【誤解③】「党の費用で家族旅行した」⇒(事実)「家族分の費用は自己負担であり、家族帯同は新たな働き方の試み」

これも繰り返し言及されているが家族分の費用は完全に自己負担である。また諸外国ではメローニ(伊)首相のように、公務に家族を帯同する政治家は多い。今回の研修は、「子育て中の女性でも政治参加し易くなることを目的とする」新たな試みとして帯同したとのことである。家族(子供)帯同は、組織としても承認された形態であった。

【誤解④】「研修報告がない」⇒(事実)「党に対して提出した」

また、やや時間がかかったが9月に入って研修報告自体は自民党に提出された。それを今後どのように扱うかは自民党の判断と行為ということになる。

【誤解⑤】「仏の少子化克服策を視察した」⇒(事実)「幼児教育義務化の実状を視察した」

「研修参加者は『少子化克服の成功事例だ』と誤認しているが、実際にはフランスは上手くいってないので少子化対策の視察先としてフランスを選ぶのはおかしい」という誤解が一部に広がっていた。しかし事実は「フランスは、『3歳からの幼児教育義務化に2019年の段階で既に取り組んでいた』のでその成果や実状に関して直接状況の聴取や意見交換をした」ということである。

他にもあるが、深刻な間違い情報について上記の通り訂正した。