午前中で終わる「時短運動会」になった理由

黒坂岳央です。

今月、子供たちの運動会に参加してきた。自分が子供の運動会と違ったのは「午前中で終了」という点だ。

運動会といえば子供のお弁当の準備があるが、午前中で終わるということはそれも不要だ。時期柄、作り置きは万が一食中毒のリスクもあるため「運動会の日は4時起きかな」と考えていたが、時短運動会を告げられて「弁当の準備もブルーシートも要らないのは楽だな」と気持ちが軽くなった。

調べてみるとどうやら自分たちの地域だけではなく、全国的に時短運動会になったようである。

T-kin/iStock

時短運動会が導入された理由

時短運動会は2020年のパンデミックの時から始まったと思われている事が多いが、実はもっと前から取り入れられていた。その一つが愛知県安城市である。

同市の発表によると、共働きの世帯への負担に配慮し弁当不要の時短開催の意見を掲載したところ、2017年まで午前中開催は市内21校中2校だったものから、2018年に9校へと増加したようである。また、北海道札幌市でも同様の理由から2018年に午前中開催の運動会が広がっていったという。一つには保護者の負担減が目的としてあり、パンデミック時期より前から進んでいたのだ。

また、教師側の負担減もその背景にあるだろう。昨今、全国的に教師のなり手はどんどん減少しており、一人あたりにかかる負担も増加してきた。ちなみに教師不足問題は日本だけではなく、米国でも起きている(詳しくは過去記事アメリカの学校で教師が消えていく恐るべき事情を参照)。もはや丸一日開催できるだけのキャパシティは難しくなりつつあるのだ。

SNSでは「子どもたちがインドアになったことで体力が減っているからだ」という声もかなり見るが、本質的理由はこのように別にある。ライフスタイルの変化に伴い、全国的に学校は時短へと踏み切ったのだ。

時短運動会はいいのか?悪いのか?

この時短運動会については意見が賛否両論である。「開催種目が少ないので違和感」「子どもたちがチームプレイを学ぶ機会が減ったのが残念」という反対意見がある一方、「間延びせず時間密度が濃いので良い」「保護者も先生も負担が少ないので良かった」という賛成意見もある。今回、自分自身が参加して感じた意見を取り上げたい。結論から言えば時短運動会は良いと思う。

自分が子供の頃は騎馬戦や組体操、入場行進など花形の種目が目玉だったと記憶しているが、時短運動会では見送られる形となった。そしてこうした花形種目はやらされる立場となると負担は小さくないのが現実だ。特に組体操や騎馬戦はかなり危険であり、毎年怪我人が報告されていた。上から落ちて病院へ行った児童もいたと記憶している。

自分が子供の頃は正直、やりたくなかった。そしてそれだけ苦労して見ている側は喜んでいるか?というと必ずしもそうでもない。これは親の立場になると分かるが、「うちの子は組体操で怪我しないか?」「騎馬戦の取っ組み合いで恐怖を感じないか?」といった心配はどうしても出てくる。今年は花形種目はなかったものの、何も違和感はなかった。リレーや短距離、ダンスなどでも十分見ごたえがあると思えたからである。

そして時短なので、1つ1つの種目を集中して鑑賞できた。これが丸一日続くとなると、寝不足になってまでお弁当の準備をしなければならず、まだまだ日中暑い時期にブルーシートで紫外線に照らされるのでかなりの体力を消耗する。さらに1競技ごとに長丁場で、同じ種目を違う学年で何度もやるのは見ている方もなかなか辛い。加えて運動会は終わったら解散、というわけにはいかずテントを解体したり椅子を片付けたりしなければいけない。トータルでは大きな負担だった。それが時短になったのは鑑賞者としての立場でも大きく消耗せずに済むのではないだろうか。

午前中だけで終わる運動会は全国的に広がりつつある。このまま完全定着すれば良いと思っている。時代やライフスタイルが変われば、それに応じて柔軟に変化すればいいだけである。社会的に一度決めたルールからなかなか変われない事が多いが、運動会については「進化」したと感じている。

 

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