パレスチナ自治区ガザの病院で17日に爆発があり数百人が死亡したことを受け、上川陽子外相は、「強い憤りを覚える」とする談話を発表した。そして「病院や一般市民への攻撃はいかなる理由でも正当化されない」と訴え、「これ以上一般市民の死傷者が出ないよう、全ての関係者が国際法を踏まえて行動すること」を求めた。
日本の外相が、ようやくガザをめぐる状況に対して、「国際法」の遵守を求めた。これまで中東情勢をめぐって、岸田首相ら政府高官は、「お悔やみ申し上げ」たり、「エスカレーションを避け」ることを願ったりしているだけで、何らかの規範に従って事態を見る、という態度を示してこなかった。
本年5月には、岸田首相はG7広島サミットの主要テーマに「法の支配に基づく国際秩序の堅持」を掲げ、「法の支配に基づく国際秩序を守り抜く」という決意を繰り返し表明していた。あの頃の岸田首相は、内閣支持率も押し上げる気概があった。
しかし内閣支持率はすっかり変わり果ててしまい、守勢に回っている岸田首相は、中東情勢をめぐっても、「法の支配に基づく国際秩序を守り抜く」覚悟などはぐっと押し殺し、ただ「エスカレーションがないように」祈り続けているだけのような雰囲気である。
大丈夫か。
欧米諸国は孤立し始めており、日本の立ち位置も不安定になり始めている。国際情勢の日本にとって非常に深刻なものになっている。
各方面に気を遣っているということはわかるが、立ち位置に一貫性がないのは、日本という国家に対する他者の視線を曇らせる。もちろん中東情勢は複雑怪奇だ。だが、だからこそ、何らかの座標軸を確認することが大切だ。指針を持たないまま、ただバランス感覚だけで乗り切ろうとするのは、かえってリスクが大きい。
岸田首相そして上川外相に、今一度、「国際社会の法の支配」を中東に向けても語ってもらい、日本が何を信じているか、何を手掛かりに生き抜いていくか、を内外にはっきりと示してほしい。
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