イスラエル・ガザ衝突:第三次世界大戦化を避けよ

Ruma Aktar/iStock

7日朝、パレスチナのイスラム組織ハマスが、イスラエルに対して前例のない規模の攻撃を開始した。何百人もの戦闘員が、パレスチナ自治区ガザに近いイスラエル領内に侵入し多くの殺傷を行い200人近い人質を連れ去った。

簡単だが、筆者は今回の件を次のように整理している。

【背景等】

  • ハマスが起こした明白なテロ行為は、当然に非難されるべきである。
  • 一方その背景には、英国の3枚舌外交でのイスラエル建国の経緯、またその後の領土拡大、入植でのイスラエルの行き過ぎがある。
  • イスラエルと米国がPLOへ対抗させるためハマスに対し手を抜いた時期もあるが、後にモンスター化した。

(参考拙稿)トランプの中東和平構想の帰趨 中東平定の大欲はあるか

【不明点】

  • ネタニヤフが今回のテロを事前に知っており、自身の汚職疑惑等を逸らすため敢えて未然に防止しなかった可能性もゼロではない。
  • 今回の件で、イランがイスラエル・サウジの接近を防ぐ等のため背後で動いていた可能性がある。
  • ガザの病院爆破は、イスラエル・パレスチナのどちら側が行ったか、動機及び狙って行ったのか事故だったのか、現時点で不明である。

【その他第三者の思惑】

  • ロシア:西側のウクライナ支援減少と、原油ガス価格の高騰、自身に中東の調停者としての役割が出て来る事を期待。
  • 中国:米国が代理戦争2正面作戦的状況に嵌り、その国力消耗と台湾有事の際に出て来られない事を期待。
  • 軍事産業:兵器・弾薬・兵站の需要に期待。
  • 英国・EU:難民流入、国内イスラム系のテロ誘発を危惧。
  • 米国現政権:国連安保理で即時停戦決議に拒否権を発しイスラエルの反撃を容認するも、前述2正面作戦が米国の直接参戦に発展する事を警戒。また来年の大統領選を睨みユダヤ勢力とキリスト教福音派の距離変化等を注視。

さて今後の展開は、喫緊イスラエルによるガザ地上作戦が実際に行われるか、行われるとした場合のタイミング、作戦内容、規模に掛っている。またそれと呼応した各国内のデモ、テロ、その反動、各地への戦火の飛び火、各国の領土的野心の実行によっては、中東発の第三次世界大戦への発展の可能性も排除は出来ない。

また、そこまで行かずとも、核保有国によって戦術核等が使用される可能性は高まり、それを避けるため、あるいは使用された後に応酬の連鎖を断つため、不安に駆られ沸然と起きた国際世論を後押しにして、国際連盟、国際連合の次の段階として大幅な国家主権の制限や自身が核武装した強力な世界政府の樹立を一気に目指す機運等が図らずも出現するかも知れない。

筆者は、何とかして共通の国際的大義とパワーバランスの下に四海が収まる事を願う。先ずはイスラエルには地上作戦の自制を、ハマス側には人質の全員解放を求めたい。だが、なおその上で大乱への備えと覚悟も必要と考える。