具体と抽象が、ビジネスを10割解決する?:『仕事ができる』

谷川祐基氏の著書『賢さをつくる』は学びの本質を明らかにしつつ具体的な勉強方法を明瞭に解説しロングセラーとなっている。

その谷川氏がビジネスの要諦を説いたのが本書『仕事ができる 具体と抽象が、ビジネスを10割解決する。』である。

谷川氏は「具体化と抽象化だけで、仕事の10割はうまくいきます」と語り始める。

そうは言われても、評者を含めた9割以上の人は何を言われているのかよく分からないし、残りの1割弱の経営者やコンサルタントといったある程度「ビジネスが分かっている人たち」からもなかなか賛同されないと谷川氏は述べている。

「具体化」も「抽象化」も、なんだかよく分からない言葉なので当然かもしれない。

しかし、本書では、ビジネスで日常的に起こりうることや会社の経営方針に至るまで「具体と抽象」という一つの軸だけで説明でき、問題が解決できることを説いている。

人が組織を作る理由は、上下関係を作るためではない

われわれ多くは会社に行くことが苦痛である。そこには厳然とした上下関係があるからだ。もちろん、上司だからと言って幸せなわけではない。

しかし、上司と部下の不幸な関係を呼んでいるのはすべて、この組織内の「上下」関係という思い込みなのである。通常のピラミッド状の組織図を90度右に回転してみるとそれが理解できると谷川氏は言う。

「社長はいちばん上でなく、いちばん右に来る。底辺だった一般社員は左側に来る。あなたの上司は、あなたの上でなくて右にいる。」

「そしていちばん重要なことだが、その図の右側に《抽象》と書き、左側に《具体》と書き加えてみる。」

人が組織を作る理由は、上下関係を作るためではない。担当する仕事を 《抽象》側から《具体》側まで役割分担するため に組織化するのだ。

この《具体》と《抽象》について真の意味で理解することが、会社やビジネス全体を理解することの鍵なのである。

賢い人は〈抽象度〉を操作する

たとえば、現場の実作業を担う「プレイヤー」は左側で《具体》的なタスクを担当している。経営理念や組織の方向性を定める「リーダー」は右側にいて組織の《抽象的》な概念・長期的な目標や思想を決定する立場にある。そして「マネージャー」は、両者の間で両者を円滑につなぐ組織づくりに責任を持たなければならない。

「仕事ができる人」とは、役職を問わず、目の前の課題が「具体と抽象」の軸のどの位置にあるかを見定め、その課題の《抽象度》を操作できる人なのだ。

本書では「具体と抽象」を操作する具体的な手立てがエピソードを交えながら展開されていく。日々何気なく行ってしまっている仕事の本質が見えてくるだろう。


仕事ができる 具体と抽象が、ビジネスを10割解決する。