「戦わずして空軍が瀕死の状態!」南アフリカ政府が驚愕の稼働率を発表 どうしてこうなった!?
モディセ国防相によると戦闘機、輸送機、ヘリコプターなど空軍が保有する388機のうち、188機が定期的なメンテナンスが予定通り行えず、飛行停止または飛行不能、60機が大規模な修理が必要、3機は経年劣化と交換部品がないため破棄、27機が修理を待ち、6機が修理中とのことです。
さらにこれは、現在南アフリカの主力戦闘機である「グリペン」と練習機である「ホーク」を抜いた数になるようで、「グリペン」は2機しか稼働しておらず24機が、「ホーク」もわずか3機しか飛行出来ず21機が、何らかの理由で飛行停止にあるとのこと。
これは極めて表層的な見方です。本当の原因は南アのジンバブエ化にあります。
94年以来ANCが長期政権となり、腐敗が進み、政権交代もなく、政権や行政だけでなく、産業界でも不正と不効率がまん延しています。
念のために申し上げておきますが、以下の批判は人種的偏見に基づくものではなく、事実を述べているだけです。ぼくも94年の民主化は否定しません。ですがその後全く政権交代がなく、豊かな黒人はより豊かになって、貧しい黒人はより貧しく、専門知識と経験がある白人が職を追われているのが実態です。
グリペンやホーク、潜水艦などの近代化パッケージ導入時もANC政権高官の収賄が報じられましたが、政権の腐敗はとどまるところをしりません。白人層に対する差別や迫害も悪化しています。
まず、高いポジションに黒人の採用を義務付けている。それも縁故が多い。お飾りであればまだいいのですが、地位と権力を誇示するために不合理な決定を会社に要求したり、私物化が進んでいます。南ア航空では幹部の私的な「海外出張」も多く、無駄な経費がでているだけではなく、オペレーションも悪影響がでています。サービスにしても90年代とは比べ物にならないほど、悪化しています。
これは下っ端でもそうです。縁故で採用されたものが、同じようなことをする。前回帰国の際に搭乗するときも、飛行機の入り口で、職員がゲート内で買ったワインが重量超過だから置いていけ、とか言っていました。幸いCAがとりなして事なきだったのですが、彼は自分の職権を誇示し、また置いていった商品をせしめようとしているのでしょう。行政や企業、上から下までこんな感じです。
そして企業は黒人を役員に入れないと、政府調達からその企業を弾きます。マレーシアでトルコ製の装甲車が採用された際に、砲塔は南ア製が採用されました。ところがあるコンポーネントのメーカーが役員会に黒人をいれなかったので採用がキャンセルされ、米国製が採用されました。このようなことをすれば、国に入る外貨が減るのですがへっちゃらです。
また企業が外国からの売上があると、現地通貨に無理やり変えるように圧力がかかったりします。このためメインバンクを海外に置いて、貿易の売上はそこにプールする企業が増えています。また必要だから海外製のコンポーネントを使用しているのに、性能が劣る国内製を使うことを強要されたりします。
このようなことをやっているわけですから、防衛航空産業においても多くの問題が多発しています。サプライチェーンがグズグズになっています。このため白人層は米国、英国、オーストラリアなど海外に職を求めて移住する例が多くなっています。
国営企業のデネル社の業績悪化もこういう背景があります。軍事産業の競争力も段々落ちてきています。例外は政商の色合いが強いパラマウントグループぐらいでしょうか。
軍隊においても、高い専門教育を受けた白人の将校、下士官が解雇されて、代わりに専門教育を受けていない黒人将兵が高いポジションについています。
10年以上前ですら、アマトラ級フリゲイトの艦長が無理な速度を要求して、エンジンが焼き付き、全交換となったことがあります。潜水艦の稼働率も低く、女性と民間人でクルーの半分を補っても稼働率は低いままです。
更にパイロットや整備兵は所得が低いこともあり、民間や外国の民間軍事会社に流出しています。
そしてANC政権は黒人が白人を襲ったり農場を奪うことを容認しています。このようなジンバブエ化が南ア国防軍まで蝕んでいると言っていいでしょう。
解決策としては政権交代しか無いと思いますが、それは大変難しいと思います。我が国の自公政権も同じ問題があるかとおもいます。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2023年10月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。