米7~9月期実質GDP成長率は4.9%増、個人消費や政府支出などが主導

mishooo/iStock

米7〜9月期実質国内総生産(GDP)確報値は前期比年率4.9%増と、市場予想の4.3%増を上回った。前期の2.1%増を超え、5四半期連続のプラス成長を迎えただけでなく、2021年Q4以来、約2年ぶりの強い伸びとなった。内訳をみると、GDPの7割を占める個人消費のほか、住宅投資、政府支出などが成長を押し上げた。

米経済の寄与度は項目別に以下の通り。前述の通り、個人消費は前期から大幅に低下しつつ5四半期連続でプラスを維持した。純輸出も5四半期連続でプラス。政府支出は4四半期連続でプラスだった。企業支出は、設備投資と在庫投資が支えプラス圏に転じた。住宅ローン金利上昇と価格高騰を受け、住宅投資は9四半期連続でマイナスだった。

・個人消費 2.69%ptと6四半期連続でプラス、前期は0.55%pt
・企業支出 横ばい、前期は0.98%ptとプラスに反転
・住宅投資 0.15%ptと10四半期ぶりのプラス、前期は0.10%ptのマイナス
・純輸出 0.10%ptのマイナス、前期は0.04%と5四半期期連続でプラス
・政府支出 0.79%ptと5四半期連続でプラス、前期は0.57%ptのプラス

チャート:Q2実質GDP成長率・確報値、4四半期連続で2%超え

gdpq31_a
(作成:Street Insights)

チャート:実質の金額ベースでは、過去最大を更新

gdpsass
(作成:Street Insights)

GDPの項目別、前期比伸び率の詳細は以下の通り。

▽個人消費の内訳

・個人消費 4.0%増と6四半期連続でプラスで2021年Q4以来の強い伸び、前期は3.8%増、前期は0.8%増
・財 4.8%増と3四半期連続でプラス、前期は0.5%増
・耐久財 7.6%増、前期は0.3%減
・非耐久財 3.3%増と4四半期連続でプラス、前期は0.9%増
・サービス 3.6%増と13四半期連続でプラス、前期は1.0%増

▽民間投資の内訳

・民間国内投資 8.4%増と2四半期連続でプラス、前期は5.2%増
・総固定資本形成 8.4%増と3四半期連続でプラス、前期は5.2%増
・民間非住宅設備投資 0%、前期は7.4%増と7四半期連続でプラス
あ構築物投資 1.6%増と4四半期連続で増加、前期は16.1%増
あ機器投資 4.0%減、前期は7.7%増と3四半期ぶりにプラス
あ知的財産 2.6%増と13四半期連続で増加、前期は2.7%増
・住宅投資 3.9%増、前期は2.2%減と9四半期連続でマイナス
・在庫投資 806億ドルの増加、前期は149億ドルの増加

▽政府支出

・政府支出 4.6%増と5四半期連続で増加、前期は3.3%増
あ連邦政府 6.2%増(防衛支出は8.0%増、非防衛財は3.9%増)、4四半期連続でプラス、前期は1.1%増
あ州/地方政府 3.7%増と5四半期連続で増加、前期は4.7%増

GDP価格指数は前期比年率3.5%の上昇と、市場予想の2.5%を上回り前期の2.1%も上回った。PCE価格指数は前期比年率2.9%上昇し、2021年Q1以来の水準に鈍化した前期の2.5%を上回った。

――国内の民間最終需要(変動の大きい在庫投資や政府支出、純輸出を除く)はQ3に前期比年率3.3%増と3四半期連続で増加しつつ、成長率の4.9%増を下回りました個人消費が強かった一方で、設備投資が押し下げた格好です。

チャート:国内の民間最終需要(変動の大きい在庫投資や政府支出、純輸出を除く)、成長率と同程度に

gdpq3sas
(作成:Street Insights)

米Q3実質GDP成長率は力強かったものの、貯蓄率は年初来で最低を更新し、学生ローン債務返済の再開も控えます。今後も個人消費を始め高い成長率を維持するならば、11月FOMCでパウエルFRB議長はタカ派姿勢を打ち出そうものですが、それもありませんでした。Fedや市場関係者が警戒するように、米経済は今後減速する見通しであり、問題はその度合いであることは明白です。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年11月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。