刑事生活20年。ガサ入れ、犯人確保、張り込み……修羅場という修羅場を潜り抜けてきた元警部による「心を強く保つ習慣」がまとめられた一冊。生々しい実践的なメソッドは読んでおいて損はない。
相手を格上に感じてしまうときは
森さんは相手を格上に感じてしまうときは、先生と生徒の関係に置き換えて話すと言いと解説している。圧倒されてしまい、言葉が出てこない場合、会話が進まずに気まずい思いをした際には効果的だという。
ちなみに刑事が相手にする人間は幅広い。政治家、資産家、芸能人など、明らかに収入、社会的地位、知名度などで刑事より格上の人はザラにいる。そして彼らは刑事とは違った世界で生きており、その道の専門家でもある。格が上だと感じてしまうと、やや腰が引けてしまう。それでは仕事にならない。こんなのは度胸の問題だ。(森さん)
格上の人の知識、経験値には正直かなわないので、逆に教えてもらうことになる。政治の世界、投資の世界、芸能の世界・・・・・・ 生の話を聞く機会なんてそうそうあるものじゃない。 緊張している場合ではないのだ。ここでひとつアドバイスをしよう。 格上の人と話すときは、先生と生徒の関係だと考えていけばいい。(同)
皆さんの学生時代を思い出してほしい。先生に教わっているときに緊張はしなかったと思う。純粋に素直に知識を増やそうと考えればいいのである。森さんも、「若手刑事のときに格上の人と話すと聞くことすべてが新鮮だった」と言う。
上司の武勇伝を有難く拝聴せよ
森さんの方法は非常に正しく理にかなっている。同じようなテクニックを紹介したい。上司になる人物は、何かしら過去の栄光……、いわば武勇伝がある。武勇伝は嫌われるという意見もあるがとんでもない。上司の武勇伝こそ有難く拝聴すべきものである。
ただし、いきなり「武勇伝を聞かせてください!」とお願いするのでは、芸がない。お酒の席で聞くにしても、この聞き方では直球過ぎて上司も戸惑うだろう。わざわざ武勇伝を聞くのは、上司の自分に対する評価を上げるため、どうせ聞くならもっとも効果が高くなる聞き方をしなければ得策とはいえない。
私ならこう聞くだろう。「部長。実はここ数ヶ月、ゲキカラ商事(仮名)に営業を仕掛けていたんですが、もうちょっとのところで商談が不成立になってしまいました。部長は営業のスペシャリストと役員がいっていたのを小耳にはさんだのですが、今後の参考のために若いころの武勇伝をお聞かせいただけませんか?」
ポイントは、上司よりも上位の役職者が上司をほめていたことをさりげなく伝え、さらに自分自身の「今後のため」に上司の武勇伝を参考にしたいと伝えている点である。
上司に「学ばせてください」とお願いしているのだから、頼まれた方もこころよく受けてくれる。「教えてください」と依頼するだけではなく、言葉にふくみを加えて、上司の自尊心をくすぐることが大切であることは言うまでもないが。
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