中国は世界平和を実現できるか?

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中東オマーンでの共同訓練を終えた後、クウェートに着いた中国海軍のミサイル巡洋艦を含む6隻の軍艦は、中東への影響力を拡大したい中国の狙いそのままに、自らの軍事力をアピールし、米軍との間で中東のプレゼンスを争っている姿をそのまま表している。

中東への影響力を拡大する中国、「軍艦6隻を中東に展開」報道に噛みつく 中東重視に舵切り替えた米国、「仲介外交」にシフトしはじめた中国はどう動く

中東への影響力を拡大する中国、「軍艦6隻を中東に展開」報道に噛みつく 中東重視に舵切り替えた米国、「仲介外交」にシフトしはじめた中国はどう動く | JBpress (ジェイビープレス)
[ロンドン発]イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム武装組織ハマスの戦争で地域の緊張が高まる中、ソマリア沖・アデン湾で半年近い護衛任務を終えた中国人民解放軍海軍の第4(1/5)

中国人民解放軍は、これまで経済力と軍事力を使って、世界中の平和維持活動に貢献してきたとアピールするが、ではこれから中国人民解放軍が中東における地位を確立できる可能性は果たしてあるのだろうか?

中国はアメリカが踏んできた轍をなぞり、経済力を背景に途上国への影響を高め、軍港建設に向けて港湾使用の権利を獲得してきた。

多数の専門家は、高利貸しのような手口で、半ば強引にアフリカ諸国の港湾施設を手中に収めようとしていると説明し、これら港湾施設の周囲に多数の中国人が住みつき、ついにはチャイナタウンが形成され、経済圏が作り出されると言う。

ただ、アフリカ諸国に港湾施設を作ったとして、それが中国の何に寄与するのか?という疑問は残る。地下資源獲得を目的にして太平洋からインド洋、南大西洋にかけての航路を確保できたとしても、南シナ海と太平洋に軍事拠点を設けること以上の意味は無いように思う。

直近の報道では、オマーンに軍事拠点を作ることで、オマーン側と合意に至ったというニュースが流れた。

中国がオマーンに軍事基地計画、バイデン大統領に報告-関係者

中国がオマーンに軍事基地計画、バイデン大統領に報告-関係者(Bloomberg) - Yahoo!ニュース
(ブルームバーグ): バイデン米大統領は、中国がオマーンに軍事基地を建設する計画だと補佐官から報告を受けた。事情に詳しい関係者が明らかにした。中国は中東との防衛・外交関係を深めようと全般的な取り組み

これは、中東における中国の軍事的プレゼンスを確保すると共に、インド洋においても覇権を握る足がかりにすることを目的にしているようだ。

中国が目指すのは、先の大戦以後ソヴィエト連邦がアメリカと世界の覇権を二分してきた歴史をなぞっているとしか思えないが、ソヴィエト連邦自身はイデオロギーで世界を征服しようと考えていたのが、現在の中国とは異なる点だ。

政治的イデオロギーによる世界への影響力は、ベルリンの壁崩壊とソヴィエト連邦崩壊により事実上、終焉したと言える。つまり、今の中国が世界に影響力を行使できる要素は、経済力のみと言うことになる。

ただ中華思想に基づく中国共産党の狙いは、膨大な人口を抱える自国民を世界のあちこちに送り出し、チャイナタウンの形成を行い、人民元を通貨とする独自の経済圏を確立しようと考えているのは明白で、世界の支配は漢民族が成すものだと考えている。冗談のような話だが、これは本当のことだ。

様々な憶測が飛び交っているとしても、現在の中国を統制することを可能としているのは、習近平一強の政治体制であることは間違いない。これまで、政敵への粛清を行なってきた習近平は、現代の皇帝を目指して党主席3期目に突入している。中国共産党内の政局に勝った習近平は、国内の政局においても国内経済を背景にしていて、中国共産党幹部の多くは、その経済的な豊かさを利用している。従来の汚職や賄賂によらず、国営企業の幹部に中国共産党幹部が就くことで、表向きは合法的に豊かさを得ている。

そして、民衆について言えることは、天安門事件の頃と今の中国が決定的に違う点として、今の中国の若い世代は、経済発展によって比較的豊かな中国の中で生まれ育ったことだ。当たり前だが、経済発展を得た代わりに、民衆は「自由」と「民主主義」を生贄にしている。

しかし、人間は食べられないよりは多少の監視社会になったとしても、経済を優先するものであって、今の中国国民の多くが中国が先進国に仲間入りしたと考えている。天安門事件の頃のように、自由もお金も無ければハングリー精神で政治体制の転覆を考える若者も出てくるが、比較的安定した経済が背景にあれば、波風を立てて今の経済的な豊かさを犠牲にしようとは思わなくなる。

超高齢化社会に突入したと言っても、道教の文化が残る中国の一般家庭は、高齢者が苦労して今の中国を築いたと考えているため、中国という国家が努力して今の国際的な地位を築いたと考えているのだ。

では、今の中国が本当に豊かさの中にあると言えるだろうか?

続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。