仕事は家でするか、会社でするか?:減少し続けるリモートワーク

コロナの頃、リモートワークは新しい仕事のスタイルだ、と極端な発想が跋扈し、やれ千葉の九十九里だ、軽井沢だ、というリゾートや趣味との両立を前提にした新しい働き方が話題になりました。更には賃料が安く環境が良い郊外に引っ越し、会社には週一度行くだけで定期券もないけれど運賃は会社持ちだし…、という方もいらっしゃったと思います。

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覚えていらっしゃる方も多いかもしれませんが、私はずっとそれには懐疑的でした。「それはコロナという特殊な状況下に於ける一時的なスタイルで必ず振り戻しがある」と。実際、リモートワークの比率は減少し続け、全国平均では7月の時点で22%まで下がっています。ピークは21年から22年初期で28%でした。個人的に思うのはテレワークは仕事のやり方の代替手段でありますが、全体効率や社員の教育、コミュニケーションを考えると企業側は少しずつ、元に戻せる範囲で戻し、リモートワークの長所は生かしていく、そんな使い方になると思います。

例えば子育て共働き夫婦が週に半分は旦那が、半分は奥さんが子供を面倒見ると言った場合とか、どうしても家のそばで用事がある時、その用事が終わったら会社に行かず、家からリモートで仕事をするという使い方はあるのでしょう。

先日、顧問弁護士の新しい事務所に行った際、「何フロア使っているの?」と聞けば「5フロア借りたけどこんな時世なので2フロアはサブリースに出した」と。では「所属弁護士の個室はどうなっているの?」と聞けば「今は専用のウェブから出社して部屋を使いたい申し込みをすると割り当てが知らされてくる」と。つまり所属弁護士全員分の個室はなく、確率論的に出社率から割り当て部屋の数が決められるわけです。「とすれば昔のように書類が山積みになっている個人の部屋はもうないのね?」と聞けば「今はほとんどクラウド処理」とのこと。弁護士事務所には書類がない時代なのです。

くだんの弁護士氏は一時は事務所から5時間も離れた別荘からリモートワークをしていた時もありましたが、「結局、今はバンクーバーにいることが多い」と。出社うんぬんより刺激の問題なのだと察しました。

私の知り合いが60歳ぐらいになってから完全リモートワークに移行したのですが、すっかり変わってしまいました。かつては外交的で社交的だったのに今じゃ家にへばりついてペットの世話をするのが生きがいようになっているのです。本人は気がついているのかどうかわかりませんが、メリハリとかハツラツという部分がごっそり抜け落ちて張りがないライフに見えるのです。

つまりリモートワークについては会社側もいろいろ考えるところがありますが、リモートワークをするその人たちにより強烈なインパクトがあると思うのです。もちろん、理想的に早朝にサーフィンができるからとか、犬の散歩を定期的にできるという方はいますが、実際には家にいると楽ちん、つまり家業と業務が両立でき、化粧も着替えもせず、楽なスタイルで仕事が出来るのです。

中にはものぐさ度が激しく進行し、家から一歩も出ない生活をする人もでてきます。私の知り合いに1週間、ほとんど外出しないという人がいます。「どうやって食事を?」といえば「全部オンラインで注文して家に配達してもらう」と。その人には快適なのかもしれませんが、社会人生活、共同生活、社会との協調など考えるとかなり偏った人格が形成されつつあるように見えます。

私は古臭いですが、仕事は会社でするもの、家では仕事以外のことをするところ、という明白な線を持っています。どうしてもという場合はやむなく家で仕事をすることもありますが、それは例外的なケース、あるいは日本との時差の関係がある場合です。

私自身、24時間をどう仕切るかといつも考えています。忙しい日々ゆえに時間の振り分けをきちんとすることでより効率的で質の高いライフが送れるように自分を60数年作り上げてきたのです。個人の感性なので何が良いという模範解答は出しにくいのですが、私は仕事は会社、家は自分の時間を過ごすところという選択肢はさほど間違ってはいないと思っています。

ただ、多くの異論もあるでしょう。そのディベートの中で自分の働き方を見つければよいのだと思います。企業では服装や髪型の自由度も多くなりました。七三にきちっと分けた髪型の銀行員がむしろ胡散臭く見える時代になるのかも、ですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年11月13日の記事より転載させていただきました。