会長・政治評論家 屋山 太郎
岸田首相は即刻辞任すべきである。これまで数々のスキャンダルが挙げられてきたが、どれも総理大臣のするような所業ではない。岸田氏自身が総理の資格がないということだ。このような人物を首相に担いだ自民党もまともな政党ではないと全員が自覚すべきだ。
中曽根康弘氏が総務大臣になった頃、じっくり心中を語るというので、喜んで日の出山荘を訪ねすき焼きを食べた。持って行った録音テープは90分を2本。話が終わったのは既に夜中だった。指しで6時間もぶっ通しで話を聞いたのは初めてだった。総理の任期中は、その抱負を聞いていたので、内閣の方針は常に見当がついた。
ある日の車中で、「宮沢(喜一氏)は何をしてるかなぁ」と秘書に聞いた。「ご夫人とゴルフ中です」というのを聞いて、中曽根氏は「勿体ないことをするなぁ」と言ったものである。「自分なら新人議員を一人選んで、毎回診断するのになぁ」というその心得に感服した。
「〇〇の大臣には、誰がいい?」と聞かれたので名前を挙げたところ、「彼は最適な人だが、痔の手術をしたばかりなんだよ。予算委員会で長く座っているのは地獄にいるようなもんだよ」。痔の手術のことまで知っている情報通にはビックリしたが、情報を取るにも細心の心がけが必要だということを学んだ。
岸田氏の人事で最初にがっくりきたのは、長男を秘書役に付けたことだ。身内を付ける人は多いが付け方が行儀作法を学ばせるつもりで付けるのと、秘書官相応をやらせていいと思っているのでは全く違う。子息は立場の違いを心得ず、自分が同格になったつもりで遊びつくすというのは、学ぶという精神が欠落している。
人事に対する自らの情報を持っていないから、大間違いの人事を繰り返すのだろう。4回も税金滞納と差し押さえを繰り返した神田憲次氏を財務副大臣に就けるとはマンガだ。しかも神田氏は税理士でもある。史上最悪の人事だ。国会議員の資格はない。
小渕優子氏を選対委員長にしたのも大間違いだ。小渕氏は以前、政治資金問題で経産相を辞任する際、「政治資金はきっちり清算して報告し、謝罪します」と名言した。しかし今回選対委員長就任に当たって全く反応なし。こういうのを恥知らずというのである。
このほかに岸田内閣の失敗は数知れずあるが、公約が次々に軽くなることも問題だ。4兆円の減税といえば満足する人はいる。それが変わらなければ「それでもいいか」と諦める人が増える。岸田氏の言葉には大臣の重みを感じないから、時間が経つと支持率が下がっていくのだ。こういう人は総理大臣には向かない。
自民党を滅ぼしたくなければ、即刻、総辞職することだ。
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屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数。
編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2023年11月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。