1ヶ月ほど前の新聞記事である。
三重県議会がYouTubeに投稿した廣耕太郎県会議員による一般質問の動画が、YouTube側から削除されていたことがわかった。
動画にはコロナワクチンに関する廣議員の発言が収録されており、議会事務局の問い合わせに対して、YouTube側からは、誤った医療情報に関するポリシーに違反しているとの返信があった。動画が削除された理由は、「学識者の意見として、欧米ではワクチンを打った方が余計に感染すると言われている」と発言したことによるとのことであった。
筆者はこれまで、ワクチンを打つほどコロナに感染しやすくなることを、海外の臨床データや基礎研究の論文でもって主張してきた。わが国にも、この主張を裏付けるデータが存在する。
図1には、今年の5月8日から始まった6回目ワクチンの接種回数と新規コロナ感染者数の推移を示す。コロナ感染者数はワクチンの接種回数に連動しており、まさにワクチンを打てば打つほど感染者数は増えている。
図2には、同時期における世界8カ国の人口10万人あたりの新規コロナ患者数の推移を示す。日本以外の国はWorldometerから新規患者数を拾うことができるが、日本の新規患者数はモデルナのWebサイトに公開されている新規コロナ患者数の推定値を用いた。
5月初旬では、ニュージランド、韓国、オーストラリアについで日本の新規感染者数は4位であったが、その後6回目ワクチン接種を開始した日本のみが増加し、7月中旬以降は、ダントツの1位となっている。ピークであった9月初旬の日本の感染者数は100人を超えており、2位のイスラエルの実に10倍である。
図3には、8カ国のワクチン追加接種回数を示すが、日本以外の国は昨年の夏以降、ほとんど接種は進んでおらず、日本の接種回数が突出している。この図には示されていないが、日本は、これ以降に6回目として2千万回接種済みであり、さらに7回目接種も始まっている。
これらのデータをもってして、YouTube側は「ワクチンを打った方が余計に感染する可能性」をどうして否定することができるのであろうか?
YouTubeでは削除された動画を、三重県のホームページでは閲覧することができたので、新聞記事にある学識者が筆者であることを確認できた。廣議員は筆者が投稿したアゴラの記事を読んでいたと考えられる。
実は、昨年来、私が出演したYouTubeの動画は悉く削除されている。国会議員や厚労省の担当官を対象にした講演の動画でさえも即座に削除されている。講演内容の多くは、アゴラに投稿した内容に基づいていることから、YouTube側の判断では、筆者がこれまでアゴラに投稿した論考は全てデマ情報ということになる。
ところで、YouTubeは誰の意見に従って、削除する動画を決めているのだろうか。この疑問に対する回答として、ツイッター(現在はX)上で、山田悠史氏が投稿した以下の記事を見つけた。
山田悠史氏は、ニューヨーク・マウントサイナイ医科大老年医学緩和医療科に所属する医師で、“コロワくんサポーターズ”を立ち上げた中心人物である。”コロワくんサポーターズ”は、 市民のコロナワクチンへの不安を減らす目的で設立され、10人のメンバーでコロナワクチンに関する相談室を運営している。“反ワクチン、反ワクチン、死ね”と言って、藁人形に釘を打ち込む動画を投稿したことで話題になったみおしん先生こと西村美緒氏も、メンバーの一人である。
山田氏のツイッター上の文面を紹介する。
私たち“コロワくんサポーターズ”はYouTube上にある誤情報の対応に取り組む公認報告者に任命されました。医療の誤情報に対する公認報告者は、世界初の取り組みとのことです。YouTubeは、これまでに新型コロナ関連の誤情報7.5万本を削除、信頼できる情報を発信しています。
以上のような背景から、YouTubeが発信するコロナワクチンに関する情報については、内容に偏りがあることは否めない。
このような現状を憂える医師や研究者が中心となって、今年の4月4日に、情報発信の自由と公正を求める共同声明が発表された。筆者も呼びかけ人に名を連ねているので以下に、共同声明の全文を紹介する。
1)国は、新型コロナワクチンに関する不利益情報についても、ワクチンを推奨したのと同じだけの分量と費用を持って、国民に伝える責務を果たすべきである。
- コンテンツ・プロバイダーは、新型コロナワクチンに関する情報のSNSにおける検閲を中止し、フェイクの検証は、情報市場の自由な競争に任せるべきである。
- SNSにおける一方的な誹謗中傷は、どのような立場に立つ者に対しても行われるべきではなく、このような行為は言論や科学を萎縮させるものであることを、
コンテンツ・プロバイダーは強く認識し、SNSを自由で公正な言論及び表現の広場となるように努力すべきである。
- コンテンツ・プロバイダーは、誹謗中傷により自由な発言を阻害し、他者の法益を侵害した者に対して、被害者の通報に迅速かつ誠実に対応すべきである。また、事後的な司法審査などによる被害回復措置について、コンテンツ・プロバイダーは、誠実かつ迅速に対応すべきである。
- 新聞社、テレビ局などの既存メディアは、国民に新型コロナワクチン接種に関し、その有益性のみでなく、死亡を含む後遺症の実態及び過去のワクチンとのそれらの比較など不利益な情報も公平に報道し、国民が接種に際し、真の自己決定権の行使がなし得るように務めるべきである。
コロナ禍の最中に起こったことについて、今後、様々な検証が行われると思うが、YouTubeなどのコンテンツ・プロバイダーの果たした役割さらにその責任も検証する必要があると思われる。