防衛装備はライセンス生産よりも生産分担を

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「ライセンス」完成品の武器輸出を解禁へ 与党、第三国移転に懸念も

「ライセンス」完成品の武器輸出を解禁へ 与党、第三国移転に懸念も:朝日新聞デジタル
 武器輸出を制限している政府の「防衛装備移転三原則」の運用指針の見直しを議論している自民、公明両党の実務者協議は15日に会合を開き、他国企業の許可を得て日本国内で製造した「ライセンス生産品」の完成品に…

武器輸出を制限している政府の「防衛装備移転三原則」の運用指針の見直しを議論している自民、公明両党の実務者協議は15日に会合を開き、他国企業の許可を得て日本国内で製造した「ライセンス生産品」の完成品について、ライセンス元の国に対しては輸出解禁を容認する方向で調整に入った。今後は輸出後にライセンス元の国からの第三国移転をどう管理するかが焦点となる。

これは多分AMVなども視野に入れていると思います。

自民、公明両党の実務者は15日の会合で、「ライセンス生産品」の完成品の輸出解禁について議論。複数の出席者によると、①ライセンス元の国に輸出②ライセンス元の国に輸出し、その国から米国に輸出③ライセンス元の国に輸出し、その国から米国以外に輸出――を検討した。輸出拡大に慎重な公明党からも目立った反対論は出なかったものの、③については、紛争当事国などへの輸出に歯止めをかける必要性を指摘する意見が出たという。

日本の「ライセンス生産品」をめぐっては現在、運用指針に基づき、米企業がライセンス元である場合に限り、部品のみを米国や米国以外の第三国に輸出できる。しかし、完成品についてはどの国にも輸出できない。今回の緩和策が実現すれば、「ライセンス生産品」は完成品、部品を問わず、ライセンス元の国であればどの国に対しても輸出することが可能となる。例えば、米企業の「ライセンス生産品」の完成品の場合、地対空ミサイル「パトリオット」を米国向けに輸出することを想定している。

これも変な話なので何で米国だけという疑問が出て当然です。

無論同盟国であり、比較的管理が厳しいというのはありますが、他国にも広げていくべきです。

率直に申し上げて時代遅れの議論です。まだF-4やF-15あたりをライセンス生産していた時代のセンスです。いかに政権与党の「実務者」に実務能力がないかがよく分かる議論です。

そもそもライセンス生産というのは提議は色々ありますが、基本的にコンポーネントの国内生産が高いものを指します。例えばF-4やF-15などはまごうことなきライセンス生産ですが、MCH-101やAH-64D、F-35などはほとんど組み立てで一般にはアッセブリー生産と呼ばれます。これらは高度な生産技術は移転されません。ガンプラの組み上げと同じです。

本来ライセンス生産とアッセブリー生産の違いをまず明確に提議すべきです。

そして現在の我が国「ラインセンス生産」は「アッセンブリー」生産に過ぎません。それは調達数が減っており、コンポーネントや部品を国内で生産すると非常に高くなるからです。ですが、そのアッセンブリー生産でもオリジナルの3〜5倍とかいうのが普通にあります。火器などは更に品質が低いという問題もありました。

必要なのはライセンス生産ではなく、コンポーネントの生産分担を取ることです。これには素材も含まれます。そしてそのためのオフセットの活用です。例えばCH-47などは川重で年にわずか数機しか作ってきませんでした。それを増やそうとしたら1機200億円を超える値段となりました。

そもそも少数生産なので効率が悪いし、「ライセンス生産」して将来自社開発につながるわけでもない。

であれば、機体やコンポーネントの一定比率の生産分担を勝ち取り、日本では完成機を作らずに、機体整備だけすればよろしい。自衛隊にそもそも開発を指導する能力はないので、あれこれ日本仕様に変えずに、無線機など最低限に留める。無線機も外国製品の方がいいかと思いますが。

そうすれば有事には海外から完成品を回してもらえます。そのような相互の取り決めを作っておくべきべきです。国内生産は戦時に必要だというのはウソです。まず急速にラインを拡大出来ませんし、コンポーネントも多くは輸入品です。戦時に増産はフィクションです。例えば「国産飛行艇」のUS-2にしろ、5年に1機ですから増産なんて何年かかりますか。それにレーダーやエンジンなど多くのコンポーネントは輸入品です。

そうであれば「ライセンス製品」を輸出するよりもコンポーネント生産シェアを獲得すべきです。そういう議論が「実務家」である自民や公明党の先生方には出来ないようです。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2023年11月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。