スペイン・サンチェス政権に大反発する多国籍企業・レプソル

政府はエネルギー企業に対してエネルギー税を課している

スペインを代表する石油とガスの多国籍企業レプソル(REPSOL)はバスク地方で2億ユーロを投資して100メガワットのグリーンエネルギーによる発電計画を凍結させた。その理由は、スペイン政府のエネルギー企業への冷遇に反発しての決定である。

スペインはつい最近サンチェス首相の新しい政権を誕生させた。社会労働党とそしてポデーモスに代わってスマールという連合政党による連立政権だ。

このスマールのイデオロギーは共産主義だ。またサンチェス首相の社会労働党も党本来の民主社会主義から逸れて左派社会主義色を強めている。それが意味するものは、この新政府は社会共産主義で、儲けている企業から税金を搾取することがポリシーとなっている。それはサンチェス首相の社会労働党とポデーモスが連携していた前政府と同じだ。

政府の課税政策に反発して本社をオランダに移したフェロビアル

この政府の過分な徴税政策から逃れるべく、今年4月にはスペインの大手ゼネコンの1社フェロビアル(Ferrovial)は本社をオランダに移した。

レプソルは今のところ本社を国外に移す意向はないとしているが、政府から高い税金を払わされていることに抗議する意味で、スペインでの投資を今後控える方針を明らかにした。その最初の具体例が冒頭で述べたバスク地方での投資の凍結である。

特に同社が強く反発しているのが、エネルギー企業に対して2022年7月から施行された国内での売上が10億ユーロ以上のエネルギー企業に対し、その売上の1.2%を税金として徴収することを決定したことである。それが今後は税率を上げて4%に増税する意向を政府が表明している。(10月26日付「リブレ・メルカド」から引用)。

今年、現在までのレプソルのエネルギー税による納税額は4億5000万ユーロとなっている。それに続いて同じくエネルギー企業のセプサ(CEPSA)は3億2300万ユーロ、ナツージ・エンデサ(Naturgy y Endesa)が3億ユーロ、イベルドゥロラ(Iberdrola)2億ユーロをそれぞれ納税している。

政府のこの税金徴収に対して、レプソルは違法であるとして訴訟を起こしているが、まだ判決は下されていない。

レプソルの納税額はスペインでNo.1

その上、スペインの法人税は37%。OECDの平均法人税は25%である。今年1月から9月までにレプソルが納めた税金は108億9000万ユーロという高額で、その内の70%の74億4100万ユーロをスペインに納税している。

スペインの上位上場企業35社の中でレプソルが納めた税金は最も高額である。同社の同期間の税引利益は27億8500万ユーロであった。

レプソルは投資先としてスペインに代わってポルトガルに注目

レプソルの今年1月から9月までの投資額は43億6200万ユーロで、その内の41%がスペイン、37%が米国となっている。(10月26日付「ディアリオ・バスコ」から引用)。

スペイン政府が今後もレプソルを徴税で搾取して行くのであれば、同社はスペインに代わって投資先として見ているのがポルトガルである。それは既に政府の耳にも入っている。それに対して、政府はこれまで同社へ3億ユーロの融資や公共事業でも同社に色々発注して来たといった弁解説明をしている。

しかし、社会共産主義政府がスペインのエネルギー企業の進展を図るべく便宜を図って行かないのであれば、最終的にはフェロビアルのように本社をスペイン以外の国に移す可能性もあるということである。

僅かの経済成長に対しその10倍近くの歳出と負債を生むのがスペイン

経済学者ホセ・ラモン・リエラ氏によると、社会共産主義政府のこの5年間での経済成長率は4.3%、一方EUは同期間に平均して7.2%成長している。また一人当たりのGDPは僅か0.6%伸びただけだ。これを年間ベースで見ると、ひとり当たり年間でわずか30ユーロ収入が増えただけということになる。

スペインの問題はGDPを1ユーロ増やすのに3.2ユーロを使い、6.5ユーロの負債を生むということなのである。その負債を埋めるべく政府がやっているのが例えば儲かっている企業に対し、エネルギー税といった項目で徴税しているのである。また負債が増えてもスペインが破綻しないのはEU中央銀行から金融支援を受けているからである。(10月27日付「OKディアリオ」から引用)