2024年は選挙イヤーだが…:「ファンクラブ化」する国のリーダー選び

数日前、夜の9時ごろに知らない番号から携帯に電話が。取ってみると当地BC州首相の事務所からで「来年10月19日に州議員の総選挙になります。その時のご支援、よろしくお願いします。ついては寄付も…」という内容でした。私は多少寄付をしているのでメールは頻繁に来るし、電話もよくかかってきます。ただ私は市民権がないから選挙権はないんですけどねぇ。

さて、前原誠司氏が国民民主党を離党、他に4人を引き連れて新党発足に動きます。その名も「教育無償化を実現する会」。つい最近、政党名を「みんなでつくる党」に変えた元「NHKから国民を守る党」をふと思い出しました。わかりやすいワンイシューを前面に出すけれど国政の案件は360度全方向。その中でそれだけ言われてもねぇ、です。前原氏の気持ちは「非自民」「共産党を除く野党共闘」なのですが、本質は帰属の問題ではなく、何をしたいかじゃないのですかね?日経には「維新と協力視野」と見出しにあります。

日本保守党、通称「百田新党」も正統派右派をかき集めて一部のおじさん、おじいさんたちを熱狂させています。その保守の動きは世界でも広がります。イタリアでは昨年、極右政党出身のメローニ氏が首相になっていますし、つい先日はオランダの総選挙で予想外に極右政党が勝利しています。最近の保守への傾倒は日々の生活への不満分子が増えているということなのでしょう。

これらの動きのきっかけとなったトランプ氏の影響は大きかったのかと考えています。つまり、Extreme な政策姿勢を打ち出し、中道ではなくYES/NOを明白にするということです。その点ではアルゼンチンの大統領選挙も「アルゼンチンのトランプ氏」と言われるハビエル ミレイ氏が当選。中銀不要説、アルゼンチン通貨を米ドルにといった極端な公約が「受けた」とされます。通貨についてはペッグ制を頭に入れているのでしょうか。選挙直後、ブエノスアイレスにいるアルゼンチン人の知り合いに「どうだい?」とメールしたところ「今後の想像がつかない!」と傍観の姿勢でした。

トランプ氏とバイデン大統領 両氏HPより

これらの動きを総括してみると個人的に思うのは政党というより「ファンクラブ化」を感じています。国政や大統領選びというのは国のリーダー選びであり、会社で言う社長です。その社長候補が「皆さんの給与を10%上げます」「働き方をもっと柔軟にします」といえば社員受けはいいけれど業績はどうなの、長期戦略はどうなの、という点がおろそかになる例えと同じに見えるのです。

国政に100のイシューがあるとします。ですが、前原新党でも百田新党でもそのうちのごく一部だけを捉えて国民を煽ります。小泉氏の郵政解散選挙もそうでしたね。ワンイシュー、劇場型です。また、この手法はSNSで見られるたった一つの特徴を流布して大人気になるのとほぼ同じ。となれば国民は100のイシューのうち、自分に関係するごくわずかの5とか10だけを見て「この人サイコー!」になるのでしょうか?

これがトレンドだとすれば岸田さんというより今の自民党の中道右派という立ち位置がポピュラーではなく「マーケティング」的観点から「いけてない」わけです。ところが自民党は図体がでかいので思想的にどちらかに偏れないという弱点があります。よって巨艦の周りを小舟政党がやんや取り囲む、というのが私の見る日本の政治絵図です。

2024年の世界の選挙はすさまじく多いです。日本に縁があるものだけでも1月13日の台湾総統選から始まり、4月10日の韓国総選挙、ロシアの大統領選挙は3月17日、欧州連合が6月6日から、9月には自民党の総裁選があり、遅くともそれまでには首相の行方が見えてきます。そして11月にはアメリカ大統領選挙です。

それ以外にもインド、インドネシア、メキシコ、更には多くのグローバルサウス諸国が選挙を予定しています。

最近の多くの選挙がサプライズ感を伴ってることも予想を難しくしています。我々は何に選挙しているのか、という疑問すらあるわけですが、世の中複雑怪奇になり過ぎて人々はもはや国の定めるルールについて行っていない、なので、全体がどうなのか、という議論はごく限られた知識人任せであとはポピュリズムで押すわけです。昔のようにシンプルな社会ではなくなったことが最大の原因だと考えています。

アメリカ大統領選ではトランプ氏再選の可能性を視野に入れよ、とされます。20年前の良識をベースにすれば再選は無いのですが、今のトレンドなら再選も大いにある、ということでしょう。

今、ふと思うことがあります。正統派のフランス料理が食べたいな、と。フュージョン料理が増えてきた中で伝統が懐かしく思えることってありますよね。こんな時代に直面しているなかで自分の気持ちをもっとも正直に述べるならこうです。

奇妙奇天烈!

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年12月1日の記事より転載させていただきました。