マネーロンダリングもどきの派閥の政治資金の還流

政界版の資金洗浄に相当か

自民党最大派閥の安倍派で中枢幹部6人がパーティー券収入から多額のキックバック(還流)を受けていた疑いで、東京地検特捜部が捜査しています。捜査対象はもっと大勢の議員です。次々に情報がリークされ、更迭は松野官房長官にとどまらず、岸田内閣は空中分解するでしょう。

岸田首相 首相官邸HPより

空席となった閣僚ポストを受ける議員は、岸田内閣という泥船に乗ることになり、人選が難しい。内閣総辞職に踏み切り、新しい首相による新内閣で出直さないと、局面を打開できそうにありません。

様々な視点からの情報、論評が飛び交う中で、私が思うのは「政治資金の不透明な流れは、やばい人たちや犯罪組織が使うマネーロンダリング(資金洗浄)の手口に通じるところがある」という点です。

マネーロンダリングは、犯罪などによって得た収益を、その出所、真の所有者が分からないようにし、捜査機関が資金の流れを追うのを攪乱するための行為です。もちろん国際的にも法律で禁止されています。

麻薬取引、脱税、粉飾決算、盗品、詐欺、裏金などの流れをつかまれないように、架空名義、他人名義の銀行口座などを利用して、資金を多数の金融機関の間を転々とさせる。その行為、工作を資金洗浄といっています。テロ組織にも使われています。

政治資金集めのパーティー券販売は違法ではなく、収入の一部を議員に還流(キックバック)することにも問題はありません。政治資金規正法によって、違法とされるのは、収支報告書に正しく記載していない場合です。正しく記載できない理由があるのでしょう。

安倍派の中枢幹部の場合、パーティー券(1枚2万円)の販売枚数のノルマ(300枚)を超えた分の還流を受け取り、金額は5年間で1千万円超ー数百万円、合計1億円を超え、裏金として使っていたとされています。

不思議に思うのは、派閥側がキックバック分の支出を収支報告書に記載し、キックバック分を受けた議員も収支報告書に収入として記載していれば、不正ではなく、捜査対象にもならない。

他派閥の場合は、キックバック分の派閥の支出、議員側の収入を記載しているそうで、捜査の対象外だそうです。なぜ安倍派だけがそうしていたのか。長年にわたる慣行か、後ろめたいことがあったのか。

とにかく資金の流れを表に出せない、隠しておきたいという動機があったのでしょう。パーティー券の購入者は主に団体、企業です。ノルマ超過分のキックバックといっても形(帳簿上)だけの話で、実際は議員個人の懐にとどまり、派閥へ納金していなかったのかもしれない。だから購入者の名前は表に出せない。

パーティー券の購入者の中に、今騒がれている宗教団体、その関係団体があったりすると、大事件になる。派閥も知らぬふりをしておき、議員個人も収支報告書に記載しない。資金の出も入りも記載されていない不透明な金となる。ある種のマネーロンダリングともいえる。

もう一つ、マネーロンダリングまがいの話があります。「1回のパーティーで20万円を超える購入者の名前、金額を公開する」(政治資金規正法)ことになっており、それ以下の金額だったとして、非公開にしているケースです。規正法のざる法の部分で、多くの派閥もやっているに違いない。

どういうことか。NHKの取材番組で「同じ派閥の複数の議員から依頼され、合計すると、上限の20万円ではなく、50万円を超えることもあった」と、証言する関係者がおりました。このルートも氏名、金額は不記載だから、誰が購入したのか分からない。政界版のマネーロンダリングです。

その場合でも、派閥は領収書を出しているでしょうから、名乗り出れば規正法違反を立証できる。名乗りを上げると、処罰の対象になるから、よほど動機のある団体、企業でないとそうはしない。そのかわり、派閥側には金額の多可を問わず、領収書の控えはあるはずで、名寄せをして、正しい金額をだすべきです。

安倍派の場合、キックバックを受けたのは数十人らしい。いったん派閥の口座に売上金を収め、資金をプールする。お金にそこからキックバックの支出をしても、お金に色は付けられないから、どこからきた金なのか分からない。これもある種のマネーロンダリングとなる。

安倍派は、18ー22年で6億6千万円のパーティー券収入があったという。そのうち20万円以下で、氏名が公開されていない金額が何%なのか、明らかになっていません。かなりの高率なら、不透明な金が相当に入り込んでいることになる。

捜査終了後、上限金額の引き下げでもしないと、世論は納得しません。20万円以下の部分につていても、捜査機関の調査が必要です。政界版のマネーロンダリングの道を封じてほしい。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年12月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。