評価と実力は別である

黒坂岳央です。

「仕事を頑張っているのに評価されない」
「あの人より自分の方ができるのにわかってもらえない」

仕事をしているとこのような不満を抱くことがある。どんな職場でもこうした「自分のスキルや実力と会社からの評価のギャップ」を感じるものだし、YouTubeの世界でも、実力があるクリエイターが必ずしも人気を集めるわけではない。

人間の魅力や仕事はエレクトロニクスの部品などとは違って「性能(実力)」だけでは決まらない。これを理解しておくことは極めて重要なことである。

tuaindeed/iStock

収入=ビジネス力ではない

仕事の成果を語る上で最もわかりやすい指標が「収入」ではないだろうか。一般論として会社でも役職が上がれば収入が増えるし、頑張った結果を認められればボーナスなどにもつながる。資本主義経済では「収入=ビジネスマンとしての価値、実力」みたいに考えられがちだが、必ずしもそうではない。

年収2000万円の窓際族サラリーマンを「Windows 2000」と呼ぶ人がいる。正直、創出する付加価値は大きいとはいえず、仮にこうした人が何らかの事情で会社を出ることになれば高い市場価値をつけられることは期待できない。彼らのビジネス力は低いと評価されてしまう事が多いためだ。

翻って物流や保育士といった「エッセンシャルワーカー」という職業がある。労働集約型産業であることが多く、スタッフ一人でも欠けると現場が回らないということが起こり得る。社会も彼ら/彼女らがいなければたちまち困ってしまう。中には非常に優秀な実力を持った人もいるだろう。仕事の社会的価値や人的価値は非常に高いにも関わらず、往々にして収入は低く抑えられてしまっている。

結局、収入というのは「どれだけ実力があるか?」以上に「どこで頑張るか?」という環境の問題が一番大きい。収入の高さが必ずしも個人の能力や貢献度を正確に反映しているわけではないのだ。

才能光る発信者たち

ブログやYouTubeの発信者の中には、知名度はほぼないのに驚くほど優秀でビジネス力の高い人がいる。フォロワーが数十万、数百万人いるインフルエンサーと呼ばれる人を凌駕する圧倒的に造詣深く、徹底的に本質でどの記事や動画も素晴らしいと思えるものを作っていたりする。

だが、誰にも見られない。内容の質、つまり実力は素晴らしいものを持っているのにほとんどの人は素通りしてしまっている、言い換えれば評価されていないということだ。最近はAIのアルゴリズムでユーザーが求めるコンテンツを出せる発信者しか見られないので、どれだけ実力があってもアルゴリズムに乗ることを意識しなければ存在しないのと同じなのだ。

自分はAIのリコメンドを無視して、手動であえて隠れた才能を探すことも多く、たまに宝石のように才能光る発信者を見つけることがあり、すっかりハマることがある。だが歯がゆい。大変優秀なのに評価されていない。往々にしてしばらく発信した後は、更新が止まり、やがてドメインの有効期限切れとともに静かに電子データの海のもくずとなって消えていく。本当にもったいないことだ。

評価も実力の内

顧客やユーザーのニーズに訴求できなければ、真の実力がどれだけ優れていても存在を許されない。そんな厳しい世界が資本主義経済である。つまり、自分の実力を評価されることを前提に仕事をしなければいけないということである。

サラリーマンでいうなら、真の顧客は評価者であり多くの場合は上司だ。上司に嫌われてしまえば、実力があっても良い評価をつけてもらうことは難しい。だから仕事はきっちりこなすのは当然として、上司が気持ちよくポジティブな評価をしたくなるような振る舞いまでが仕事なのである。

自営業者ならマーケットからの評価である。全員から好かれる必要はないし、むしろターゲット顧客以外からは好かれてはいけない立場である。だが好かれたい相手には嫌われないように、約束を守って誠実に仕事をしたり、顧客の期待値を常に超える成果物を出し続ける努力が必要になる。

「頑張りを報われない」というのは評価も実力の内という事実を見落としている。世の中は評価される仕事をしてなんぼなのだ。

 

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