どうしてうまくならない日本人の英語

岡本 裕明

英語能力を点数で測ろうとしようというのに無理がある、これが英語の国に住み続けて思うことです。とはいっても公的な英語検定の結果はその人の一般的な知識を瞬時に判断するのにこれほど都合が良いものもありません。私も関与するホームケアの会社では業容が伸びて続けているので人材は常時採用状態です。つまり、面接も頻繁に行われており、私はその採用を決める一人であります。

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海外での日本人採用に於いてポイントは割とシンプルです。専門領域の経験とそこから得たものがどれぐらいあったのか、なぜ海外なのか、対象の業務に適性があるか、です。

では英語の能力は第一義ではないのでしょうか?語弊があるかもしれませんが、日本人で介護職を希望されてやってきたばかりの方がローカル並みとは言わずとも業務をスイスイこなせる語学能力とかIELTS(カナダで主要な英語検定で現在はほぼこれ一本に近い)で読み書き聞く話すの各項目で医療に支障がないとされるレベルの7.0点を取れる人なんて奇跡なのです。

なのでむしろ「どれぐらい英語ができないのか?」を基準にみています。箸にも棒にもかからないのか、出来ないなりに明るくブロークンイングリッシュを発する勇気はあるのか、などをみます。

かつてカフェを経営していた時に韓国人を時折採用していました。理由は日本人より英語がまともだったからです。10年前はTOEICがまだ花形で、韓国人は異様に点数が良かったのです。その時採用した一人も確か990点満点の950点とかそんな点数でした。ところがその人の英語は試験英語なのですね。いわゆる実用ではないため、実戦で非常に苦労したのです。何が、といえば会話とは社会や文化を背景にしているのです。なので言葉だけ知っていても十分役立たないのです。

分かりやすい例を言うと皆さんチャットGTP、お使いになっていますか?私はめったに使いません。情報が十分ではないからです。(使い方の問題もあるかもしれませんね。)つまり、どれだけ立派な武器を備えていてもそれを使いこなす作法がなければ「切れない刀」と何ら変わらないということです。

さて、日本人の英語能力を高めたいというのは教育に携わっている人たちの悲願のようです。が、申し訳ないけれど中学生3年生ぐらいの実用英語能力は公立中学あたりの試験結果を見ればわかりますが、激しく、恐ろしく、驚愕的なレベルの低さです。そりゃ、中にはきらりと光る子はいます。でもそれは四葉のクローバーを探すぐらい難しいのです。

なぜかといえば英語は宇宙人語と大して変わらないのです。宇宙人としゃべったことがないのと同様、中学生には外国人と話すことなどありそうでないのです。また、その言葉が持つ背景や意味を理解できないのです。

「How`s it going?」なんて学校では習わないと思いますが、我々の日常では普通。そしてこの「どうだい?」と聞かれた時に相手が何を期待してそれを聞いているのか、理解しなければとてつもなく恥ずかしいまるで頓珍漢な答えをすることになり、相手はそれで相手のレベルを推し量ってしまうことにもなるです。

皆さんの中で韓国語が多少できる人はいると思います。では韓国語の読み書きができる人となると相当少ないと思います。理由はハングルになじみがないのです。中国語はなんとなく読めます。英語が母国語の人はフランス語やスペイン語のスペルを見ても驚きはしないでしょう。ほぼアルファベットであり、見覚えがあるからです。しかし、ハングル文字は朝鮮が選択した史上最大級の間違った決定であり、韓国人を半島に押し込めた一つの理由だと思っています。そして第二外国語で韓国語を学ぶ人が少ないのはそれを使う人口が少ないから、これに尽きるのです。

私は少しだけスペイン語をかじったことがありますが、それは必要に迫られてであります。周りにメキシカンや南米の人は多いし、アメリカ南部なんてスペイン語圏かと思わせるほどです。スペイン語程汎用性の高い言語は英語以外では少ないでしょう。またスペイン語はポルトガル語やラテン系の言葉に似ているので5-6か国語がすぐに覚えられるというメリットもあるのです。欧州の人が数か国語喋れるのも生活の上で使わざるを得ないからなのです。

成田空港。昨夜もそうでしたが、搭乗口には外国人のスタッフがかつて見たことないほど多くいます。想像するに日本人スタッフで英語対応できる人が足りないのだと思います。今や、新幹線の車掌のアナウンスも英語で結構上手にしゃべります。必死で英語ができる人を探し、必死で英語を教育しているのだろうと思います。それでもこれだけ外国人が増えるとコミュニケーションエラーを理由としたトラブルが発生しやすい、だからこそ外国人スタッフを雇わざるを得ない、これが現状だと思います。

英語を本当に身に着けさせたいと思う親御さんがいれば子供を幼少期の時、できれば2-3歳の頃から外国人と定常的にしゃべる癖をつける、これしかないと思います。それも英語学校ではなく、生活の中の英語です。我々のように大人になって覚えた英語ほどべたな英語はないと自分で31年も英語圏に住んでいて自慢じゃないけれど、実証済みであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年12月17日の記事より転載させていただきました。