今年の良書ベスト10

万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

1の原著は世界でベストセラーになり、「人類史を書き換える新理論」として話題になったが、これは新理論というよりヨーロッパ中心の人類史を石器時代にさかのぼって否定する「人類学批判」である。残念ながらグレーバーは死去したが、われわれが自明と考えている国家や文明などの概念を実証的に批判し、新しい社会科学の可能性を示している。

  1. グレーバー&ウェングロー『万物の黎明』
  2. ブランシャール『21世紀の財政政策』
  3. ノードハウス『グリーン経済学』
  4. ダンバー『宗教の起源』
  5. マカロー『親切の人類史』
  6. 田中秀明『新しい「国民皆保険」構想』
  7. ライハニ『「協力」の生命全史』
  8. Lomborg, Best Things First
  9. クリスチャンセン他『言語はこうして生まれる』
  10. レイランド『人間性の進化的起源』

経済学では、2が今後のスタンダードになるだろう。MMTもリフレ派も、ブランシャールの理論の特殊な場合として含まれる。いずれもゼロ金利を自明の前提としているが、これから金利がプラスになると、積極財政や金融緩和のコストを意識しないといけない。

3は経済学の常識だが、政治の世界では「化石燃料の禁止」や「ガソリン車の禁止」などの裁量的規制が今も議論されている。8もいうようにこの種の規制は非効率で、そのメリットはコストより小さい。

今年はいろいろな分野で「進化」の概念が話題になった。4や5や10は文化や宗教を進化の理論で説き明かすものだ。「利他的行動」は必ずしも利他的ではなく、7のように集団を守る行動として理解できる。言語も協力の産物であって、その逆ではないのだ。