大幅に遅延している世田谷区の本庁舎整備工事。区は施工主である大成建設と違約金などについて詰めの交渉中だが、保坂区長が強く主張していた「目に見えない部分の賠償金」について、見通しがまったく立っていないことが、議会質疑で明らかになった。
大成建設が世田谷区へ支払うことになっているのは、全3期工事中の1期工事に関する約款に定めのある違約金、約7億8300万円と遅延に伴う実損分。さらに、保坂区長は8月1日の記者会見で、「目に見えず、数値化しづらい部分の損害についても(大成に)対応してもらい、区側に負担がないようにしたい」と発言し、大成との交渉に強気で臨む姿勢を示した。
それが何を指すかというと、「例えば、工事遅延に付随することで、区民の方々が施設を利用することができない、区のその他事業の遅れや職員の残業など」と記者の質問に答えており、区長の主張は区民からも多くの賛意が寄せられた。しかし、この発言から4ヵ月経った今、何ら進展している様子がないのである。
そもそも、この内訳を具体的に、金額として明示しなければならないはずだが、未だにそれがなされていないのは何故なのか、と訝しがる声が議会で多く上がっている。また、協議が決裂した場合、裁判に訴えてでも税金を取り返す気概があるのか、と代表質問でも質したが、区長から芳しい答弁はなかった。
本庁舎整備は、総予算約400億円にも上る世田谷区の一大事業である。物価高騰などによって、さらに約14億円のコスト増も報告されている。今回の遅延は大成建設の全面的な落ち度によるものだが、賠償金交渉は、区長が区民の血税にどれだけ思いを致しているかを判断する上での、一つの試金石になる。腰砕けの取引に終われば、「いつものパフォーマンス」との誹りを免れない。保坂区長の“本気度”を注視したい。