中国がアルゼンチンとのスワップ協定中断:外交転換を図るミレイ大統領

アルゼンチンの新政権による外交転換

欧米との関係強化を開始したミレイ新大統領に対し、中国はアルゼンチンに対し提供していた65億ドル規模のスワップ協定を一時的に中断した。中国そしてロシアと緊密な関係を維持していたキルチネール派のアルベルト・フェルナンデス前大統領の政権時に中国はスワップ協定を50億ドルから65億ドルに規模を増やしていた背景があった。

もともとアルゼンチンはクリスチーナ・フェルナンデス・キルチネール大統領の政権時(2007-2015)にロシアと中国との関係の強化に動いた。それを裏付けるかのように彼女は2期大統領職務に就いていたが、米国は一度も訪問しなかった。彼女は感情で政治をする傾向があり、米国を毛嫌いしていたようだ。

そのあと欧米寄りのマウリシオ・マクリ大統領(2015-2019)が誕生したが、彼のあとアルベルト・フェルナンデス大統領はまたロシアと中国寄りに外交転換した。

このような背景があって、ミレイ大統領はまた欧米寄りの外交に戻す姿勢を大統領選挙戦の時から明らかにしていたことに米国は強い関心を示していた。彼は大統領選挙戦中は共産主義国との取引はしないと表明していた。それでも中国はミレイ氏が大統領に成ってからの姿勢を窺う意向でいた。

ミレイ氏は大統領に就任した12月10日の翌日11日には中国の全国人民代表大会常務委員会の武維華副委員長を大統領官邸に招いて会談をもった。この時点までは中国との関係はこれまで通りの展開を続けて行くものと思われていた。

ミレイ政権は裏で米国の戦闘機の購入を進めていた

ところが、その裏ではアルゼンチン新政府はデンマークにある中古の戦闘機F-16を購入することを決めていたのである。この転売をペンタゴンが既に10月にミレイ候補の陣営に許可していたということも判明。12月19日付「インフォバエ」参照)。

アルベルト・フェルナンデス前大統領の政権中に中国のJF-17を購入する計画が進められていたにも拘わらず、ミレイ氏の政権がF-16を購入するということが判明。この時点で王毅外相は早速在ブエノスアイレスの中国大使王維新氏を北京に呼び寄せた。ミレイ大統領の今後歩む姿勢についての情報収集をする為であった。その後、中国政府は突如スワップの中断を決定したというわけである。

アルゼンチンはBRICSに加盟しない

中国がこのような決定をした背景にはもう一つ要因がある。アルゼンチンがBRICSに加盟しないことを決めたことである。この加盟の準備は既に進められていたにも拘わらずだ。アルゼンチンのBRICS加盟にはブラジルのルラ大統領が強く後押しをしていた。

それとは反対に、米国の高官のブエノスアイレスへの訪問が増えているということである。最初に米国国家安全保障会議のマイク・パイル大統領副補佐官と他2名がブエノスアイレスの大統領官邸カサ・ロサダを訪問。それに続いてジェイ・シャンボー財務金融補佐官の訪問があった。同氏はアルゼンチンが抱えているIMFへの負債の返済さらに繋ぎ支援金について重要は鍵を握る人物である。

米国にとって、ラテンアメリカは左派政権の国が多く誕生している状況の中で、特にブラジルの左派ルラ大統領の存在に対抗するのにアルゼンチンを味方につけるのは重要だと米国政府は判断しているのである。