富裕層ビジネスの継続は想像よりずっと難しい

野村證券は、来年4月から個人向け部門の名称を「営業部門」から「ウェルス・マネジメント部門」に変更するそうです。

富裕層をターゲットに絞って営業するのだと理解しています。しかし、富裕層ビジネスを継続するのは、部門名を変える程度のことでうまくいくほど簡単ではありません。

まず一般の消費者と富裕層の違いを理解する必要があります。

富裕層は高くても良いものならお金を払いますが、価値を感じないものには、安くても興味を示しません。

つまり価格競争で安売りするだけでは、通用しないということです。価格だけではなく、価格以外の他社との差別化が必要です。

また、富裕層は不満があっても表立ってクレームすることはありません。「金持ち喧嘩せず」です。これは、例えば富裕層が集まる高額なセミナーより、誰でも参加できる無料のセミナーの方がクレームが多いことからも明らかです。

クレームしないから満足しているとは限りません。富裕層は文句も言わず静かに去っていくので、そもそも問題があったのかどうか、あったとしたらどこにあるのかを知ることが難しいのです。

更に、富裕層は横のネットワークが強いのも特徴です。狭い社会でつながっているので、悪い情報は口コミで一気に広がってしまいます。

このような人たちを相手にして、本質的に価値のない商品やサービスを提供しているだけでは、価値を実感してもらえず、いずれ顧客は離れていきます。

ワインやウイスキー、貴金属、高級車といった嗜好品を提供するような富裕層ビジネスの場合、移り気なメンバーを満足させ続ける新しいコンテンツの提供が必要です。

また、顧客獲得ノウハウや投資情報のような実利を提供する場合は、コストに見合った結果が継続できるかどうかがポイントです。

富裕層を対象としたコミュニティの多くが、3年も経たずに消えていくのは、このような価値あるコンテンツの提供を続けることの難しさを示しています。

私が主宰する富裕層コミュニティ資産設計実践会は、ありがたいことに既に9年続いてきました。半年ごとに開催されて、現在開講されているのは、第18期です。

当初は30人足らずだったメンバーの数は、今期150人を超えるまでに成長しました。

長期で続けられた最大の理由は、富裕層が求めるインナーサークル情報を常にアップデートし続けたことにあると考えています。

と言っても油断は禁物です。来年も更にバージョンアップしたコンテンツをメンバーに提供していく予定です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年12月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。