カタルーニャ州が衰退して行く要因
2017年10月に実施されたカタルーニャの独立を問う住民投票がきっかけとなり、カタルーニャから現在まで8746社がカタルーニャ州から本社を州外に移転させた。その向かった先で一番多いのがマドリード州である。
なぜカタルーニャから企業が脱出するのか。それは次のような理由からである。
- カタルーニャがもし独立した際にはカタルーニャ共和国はEUに加盟できなくなる。そうなると、カタルーニャに本社を置く銀行はヨーロッパ中央銀行からの支援を受けられなくなる。一般企業だとスペインに輸出することさえも関税がかかることになり、競争力がなくなる。
- カタルーニャ自治州の財政事情は悪く、スペインでカタルーニャ自治州が定めた税金は15種類もある。これは断トツで、2番目に税金の種類を多いのはムルシア州とアンダルシア州で僅か6種類しかない。マドリード州になると4種類だけだ。
- カタルーニャは深刻な財政赤字にある。自治州のGDPに占める負債でカタルーニャは34%。一方のマドリードは15%しかない。
- 本社をカタルーニャ州外に移転すれば法人税など同州で納める必要がなくなる。
カタルーニャへの外国からの投資が激減
カタルーニャで独立しようとする動き(プロセス)が2000年頃から起きて、2019年までに同州のGDPに占める産業分野は22.6%から14.6%にまで後退している。(文献Economía del Separatismo Catalánから参照)。
また2010年から2018年まで外国からの投資額はマドリードが907億4000万ユーロに対し、カタルーニャは276億4400万ユーロでしかなかった。(同文献から)。
米国はカタルーニャへの投資は御法度になっていると言われている。フォルクスワーゲンがバレンシアに電気自動車用のバッテリー生産工場を建設することが決まったが、同社傘下の自動車メーカーセアット(SEAT)はカタルーニャにある。だからカタルーニャにバッテリー工場を建設してもよさそうなものであるが、バレンシアにそれを決めた。その背後にはカタルーニャの独立の動きがあることを敬遠したものと思われる。
独立へのプロセスが表面化してからカタルーニャは多くの面で後退を余儀なくさせられているにも拘わらず、独立派政党が運営するカタルーニャ州政府はそれに目をつぶるかのように相変わらず独立することに固執している。カタルーニャ州民の半分は独立に反対しているというのにだ。
サンチェス氏が首相のポストを継続する為に払った代償
サンチェス首相は下院での首班指名で過半数の支持票を得るためにスペインから独立しようとする2政党からも支持票をもらうために色々と譲歩した。例えば、カタルーニャ州が中央政府から融通してもらっている借金の中から150億ユーロを棒引き。カタルーニャで徴収する税金はこれまでを中央政府に納めていた分も含めて100%カタルーニャ州で運営する。プロセスから2017年の独立を問う住民投票に至るまでに犯した反逆罪や横領罪に対し恩赦を与える。特に、恩赦については憲法に違反するとして司法はそれに反対して審議に活発な動きがみられる。
一連のこれらサンチェス首相政府の独立派への譲渡は国民を二分させている。この影響もあって、これからもカタルーニャを脱出する企業がさらに増えると予測されている。
それが意味するものはカタルーニャ州が衰退に向かうということである。それは同時にスペインの衰退につながるものである。