議員逮捕と自民党支持者の教訓

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柿沢未途議員逮捕の背景

公職選挙法違反容疑で、前自民党衆議院議員の柿沢未途議員が逮捕された。

かねてから、逮捕に至るのではないかとの憶測が飛び交っていたが、大方の予測通り、逮捕となった。

詳細はこれから明らかになるだろうが、数回の事情聴取の際、柿沢議員が買収の意思は無かったと主張したことが原因だろう。また、2019年に逮捕された河井克行元法相と河合杏里元参議院議員による地元議員への買収事件が遠因であったこともある。

そして大きくは、現在、自民党内の派閥の中で資金集めの為のパーティー券収入の不記載問題がクローズアップされており、お金と政治にまつわる事件が注目されていることもあり、今回の江東区長選挙における金銭の授受を買収と見て、東京地検は逮捕に踏み切ったのだろう。

柿沢議員と秘書4人逮捕 江東区長選買収などの疑い 計330万円超を立件

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今後は、関与した人の違法性の認否に焦点が移ることになる。

大抵は、

「違法性があったとは認識してなかったが、違法行為だったとしたら、反省します」

と言うことで潔く違法性を認めれば、執行猶予付き判決で、議員資格失効となり非選挙権も剥奪されることになるだろう。

国会議員が自らの選挙区において、地方議員や首長の応援を行うのは、自らの選挙に際し、地元議員や首長の支援、また票の取りまとめを期待してのものであり、小選挙区制度を取り入れている日本の選挙制度の場合、地方と都市部の如何に関わらずあり得ることだ。そしてそれは何も与党自民党に限ったことではない。

むしろ、与党だからこそ自民党議員が注目されるし、対抗勢力からの情報提供もあるだろう。

東京地検の面目を保つために、今回は柿沢議員が人身御供に遭ったわけで、では、これからボロボロと同様の事件が表沙汰になるか?と問われれば、そんなことはないだろう。東京地検は、要するにいつでも立件できますよ、と言ってるに過ぎない。

だから国会議員の皆さんは、ヤバいことをやってるなら、直ぐにやめなさいよと言ってるのだ。

特に今回のような事件の場合、お金の授受の双方の考え方の問題であり、「陣中見舞い」と思えば陣中見舞いになり、「票の取りまとめ依頼」と思えば票の取りまとめになる。本来的にはお金を渡す方も受け取る方もなあなあで、お互いに「分かってるよな?」と暗黙の意思疎通を行うものだ。

しかし、時にその関係性が崩れたり、議席が欲しい対抗馬が、情報を得るとそれをリークして表沙汰にすることで事件化そうとする。

東京地検特捜部が動くのは、世間を揺るがすような事件の場合のみであって、相手が小物だったり、マスコミが騒がない相手なら東京地検は本腰を入れない。彼らとて、それほど暇ではない。

繰り返すが、今回、柿沢議員を東京地検特捜部が直接逮捕したのは、現役国会議員だと言うことと、河井克行元法相の逮捕、そして現在の自民党内の各派閥のキックバック問題があるからだと、私は見ている。

自民党議員は、今回のキックバック問題と柿沢未途議員の逮捕を通じて、教訓にしていただきたい。

政治家はお金が無い

つまり、生き馬の眼を抜く政治の世界にあって、絶対的に信頼できる相手は存在しないと言うことだ。確かに法治国家の立法府にいる以上、法を犯すことは絶対にダメだが、国会議員だから、地方議員だからといって、誰もが法律に精通しているわけではない。今回のように、長年の習慣めいたものが党内に存在していて、多忙な中で会計責任者や秘書に雑事を任せていれば、本人の予期せぬ事態が起きないとは言えない。

また、地方の支持者や後援会員の中まで身元調査など出来ないから、結局、誰が紛れ込んでるか?など、議員本人が掌握することも出来ない。これは、何も自民党議員や派閥を擁護したいのではない。それが現実なのだ。

今回の件で、政党助成法、政治資金規正法の見直しが行われることになるだろうが、国会議員の多くが指摘してるように、政治家は総じてお金に困っている。お金で悪いことをしないように政党助成法が作られたのだが、政治資金規正法にしても政党助成法にしてもザル法と言えばザル法だ。法律であるにも関わらず、その使途に関して規制が緩やかな背景には、議員活動には多額の費用が必要であることを議員自身が理解しているからだ。

700名以上の国会議員の中には、手弁当で政治活動を行っている議員がほとんどであり、裏金なり支援者のお金をアテにしなければいけない実情の中で、これ以上、政治資金規正法や政党助成法に規制が入ると、お金が無く政治家になることは出来ないと言うことになる。

だからこそ、支援者は然るべく手続きを踏み政治家を支援することが必要であり、仮に自らの仕事に便宜を図る目的で政治家に近づいたり、政治家に影響力を持つことで自らの業界で幅を利かせるとしても、それは実はそれほど大きな働きにはならない。

建設業界、建築業界など特にそうだが、水道組合や電気工事組合に入って当番制の中に組み込まれたり、災害時の復旧工事に従事したとしても、実は青天井でお金を請求できるわけではなく、むしろ限られた人数で工事の請負を行う度に、仕事が詰まってしまい、結果的に他に仕事を振り分けることになる。

要は政治家に近づいて便宜を図ってもらう以前に、まず業界で働いてもらう人を如何に増やすか?が大きな課題だ。これは一例であって、他の業界でも人材不足は深刻な状況に陥っている。

何を言いたいか?と言えば、政治家に便宜を図ってもらうとすれば、各業界における人材確保の為の、規制を如何に緩和するか?如何に各業界の人材育成に行政の協力を得られるか?であって、政治家に近づく業界人も目先のお金目当てでしかなく、そこは政治家ばかりを責められない。

一般のサラリーマンや引退した年齢の人たちは、政治家は庶民の暮らしを良くするために政治家になったと考えている。それは間違ってはいないし、そういう信念を持つ政治家は大勢いる。しかし、一方で、お金目当てやチヤホヤされたいがための目的で政治家になることに固執している者はたくさんいる。

以後、

・お金と地位に汚い政治「屋」を断ち切るのは有権者

続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。