2つの災害に思うこと:航空機の事故と地震

「正月早々」と呟いた方も多いでしょう。大地震と航空機事故という年間10大ニュース候補に上がるほどの災害が24年の1日目と2日目に起きてしまいました。お亡くなりになった方々にご冥福をお祈りするとともに速やかな復旧と対策を考えねばなりません。

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まず、先に航空機の事故ですが、これはまだ原因などは一切発表されていませんが、当事者である双方の機長が生存していること、管制塔の交信記録、ブラックボックスなどの解析もすぐに行われるでしょうから比較的早い時期に原因は分かると思います。素人考えは禁物ですが、誰かのヒューマンエラーであるような気がします。

その場合、誰が悪いという話よりもこれだけ技術が進みやれ、ITだAIだという中で重要な判断がいくらプロ同士とは言え、人間だけで行われるのだろうか、というのが今回のキーポイントの様な気がします。多くの専門家が「ありえない事故」と異口同音に述べていますが、あり得ないならこの事故が起きるわけがないのです。起きたのだからありえないという発言そのものがおかしいのです。

私はプロという言葉にあまり信頼を置いていません。なぜならプロは時として主観的であり、単に経験が長いだけでプロと称されることもあるからです。航空機の操縦にはライセンスが必要ですからパロットは当然、資格を持ち合わせているわけですが、資格と熟練とミステイクの有無は必ずも一致しないのです。人間ゆえの不完全さがそこに存在するのです。

私が再三申し上げてきたことの一つに世の中の複雑さがあります。30-40年前と今では何か一つの作業や行動を起こすにしても様々なルールや縛り、内規、当然の知識…といった決まりごとが異様に増えています。シンプルな時代から時間をかけて一つひとつルールを増やすならば吸収できることも多いのですが、新入りであれば一度に覚えることが非常に増えます。また、この場所ではこのやり方が適用されるが、あの場所ではこういう決まりといったローカルルールもあるでしょう。それが余計複雑にするわけです。

人は機械ではないし、十人十色であることを考えると規則というマニュアルで縛り込むやり方には限界があるのだろうと考えています。仕事をしている方は「こんなに覚えられない」と呟いている方もいるでしょう。私が想像する今回の事故の遠因はそのあたりにあるような気もします。

ならばどうするか、答えは今だからこそITなどテクノロジーに頼るしかないと思います。現代の飛行機がどのぐらいハイテクになっているかは存じ上げませんが、全ての機材が同等以上の安全技術を備え、繋がるだけではなく、強制的に誘導できるぐらいのシステムを立ち上げざるを得ないのでしょう。

次に地震です。一日たって被害が大きくなってきていることに驚いています。能登地方は以前から震災の巣とされ、水蒸気か何か流体のようなものが地下から吹き上げたものがプレートをずらすというのが専門家が2022年頃に解明したメカニズムです。2007年の地震、及び2020年12月頃に群発地震が発生しており、今回もそれと原因を同一にしている公算は高そうです。その仕組みを見る限り研究は進むものの確証がないために住民に不安を煽ることも出来なかったという遠慮が被害を大きくした気もします。

少なくとも能登の震災リスクは科学のチカラである程度の分析が出ていたわけでそれに対してあまり対策が立てられていなかったとすればそれは残念な結果だったと思います。素人の私が見ても思わずうーんとうなってしまうような研究成果が学者レベルでは発表されています。

ところで大きく取り上げられている7階建ての建物が横倒しになったケースは例外的な気がします。写真で見る限り、杭が不充分だったように見え、個人的には地盤調査不備か建築物の構造設計か施工の何処かに起因があった気がします。普通はあんな横倒しにはならないと思います。

今回の震災で見たのは木造住宅の脆さです。大規模な火災も発生しました。日本は数々の大震災に見舞われてきていますが、その場で経験しないとどうしても他人事になりやすいことは否めません。国土強靭化計画というのがありますが、地震対策に於いて古い木造住宅は極めてリスクが高いことを鑑み、例えば日本全国の空き家住宅を登録制にして災害時にその住宅を一時的に活用し、住宅の復興の際には強靭化を前提としたRC造や耐震構造を備えた住宅を整備していくといった県のレベルを超えたプランが必要だと思います。国交省が主導できるとは思えないので、まずは首相官邸から具体的な方針を打ち出すべきで同様の震災が起きても被害を最小限に食い止める術を練るべきでしょう。

ご批判を覚悟で申し上げるならリスクが高いエリアでの住宅建築は制限すべきかと思います。先祖代々の土地、ということは分かるのですが、科学の力をもってリスクが認められるならそこに住宅建築を許可するのは違和感があります。そもそもコンパクトシティがいわれてきている時代です。大胆な発想転換と安全対策が必要です。

日本は常に災害との背中合わせでした。航空機の事故は別次元ですが、乗り越える強さを持っているのも日本の特徴です。ただ、そろそろ乗り越えるだけではなく、自然災害にしろ人災にしろ最小限に食い止めるというPreventive (予防的)措置をもっと拡充すべきでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月3日の記事より転載させていただきました。