「能登半島地震の投稿」で炎上する発信者の特徴

黒坂 岳央

黒坂岳央です。

新年から震災や痛ましい事故が続く。本当に一刻も早く事態の収束を心より願う。

一連の災害や事故において、YouTubeやSNSの発信者の間で震災関連の話題を投稿することで炎上して謝罪に追い込まれる人がいる。これは今回の能登半島地震に限った話ではない。過去にも911や311といった痛ましい事件を話題として取り扱う時にも見られた同様の反応だ。つまり、発信者のモラルや配慮が問われる問題である。

最近、あちこちで炎上→謝罪へと展開する様子を見てその共通点が見えてきたので言語化することに挑戦したい。それにより、視聴者を不快にする投稿やコンテンツ制作を抑制する一助につながればと願いを込め、筆を執りたい。

takasuu/iStock

地震でアクセスを集めたい意図

まずは最大の炎上理由になり得るのが「地震」という話題を使って「オウンドメディアへのアクセスを集めたい」という意図が見える場合である。

発信者の実績を示す1つの指標としてフォロワー数(動画で言えばチャンネル登録者数)が挙げられる。SNSでは信用が蓄積するとその数値そのものが信用を作り出すメカニズムが働くため、一部の人はこの数字を増やすことに熱中になるあまり、地震の被害をアクセスを集める「ネタ」として軽率に取り扱い、炎上を生み出す。

もちろん、キーワードを使うこと自体は悪ではない。この記事も当該キーワードを用いているが、本稿は公共性を意識した問題提起の意図を持って書かれた。問題はメディアコンテンツに「自己メリット>公共性」という図式が視聴者側に見えた場合である。つまり問題は制作意図なのだ。

実際、YouTubeの動画であちこちで炎上しているが、そのどれもが動画のコンテンツの質はおざなりにされ、とにかく震災を話題に取り扱うことでより多くのアクセスを集めて自分の懐を温めたいという意図が見抜かれたことで問題になっている。世の中には火事場泥棒という言葉があるが、アクセスを集める目的で発信された公共性の低いコンテンツで他人の不幸で飯を食う図式が、ある種の火事場泥棒のように映るため炎上してしまうと推測が可能だ。

デマや誤りの拡散

震災や事故が起きると、必ずといっていいほど間違った情報、積極的にデマを拡散してしまう人が現れる。特にXなど短文と画像をリアルタイムに投稿しやすいSNSではそれが顕著で、今回も残念なことに多くのデマが投稿されている。

自分が注目を浴びるために嘘やデタラメを投稿するのはもうお話にならないのだが、問題は本人がデマとは気づかず、良かれと思って間違った情報を熱心に拡散してしまうケースである。

たとえば実際に起きているのが、「生き埋めになっているから今すぐ救助を」といったメッセージと架空の住所の投稿に対して「助けねば!」と積極的に拡散されたことで混乱が生じたケースだ。もちろん、本当に救助を求める投稿もあるのだが、そこへデマの拡散が交じってしまうと一体何が本当かがわからなくなってしまい、結果として社会に混乱をもたらす。特に影響力を持つ発信者の場合は被害を拡大させることにつながるため、不正確だったり混乱を生み出す活動は炎上を呼びやすい。

災害や事故は非常にセンシティブな話題につき、軽率に取り扱うと炎上の火種になりやすい。とはいえ、自粛を意識しすぎるのもメディア多様性を担保する公共性を損なうデメリットも生まれる。ではどうすればいいか?結論的には普段通りの発信を心がけるのが良いだろう。発信者の使命は視聴する側の役に立つ知識や情報を出すことにあるので、そこだけに注力すればいいのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。