山崎元さんが人生の最後に教えてくれたこと

食道ガンの治療中だった経済評論家の山崎元さんが元旦にお亡くなりになったとニュースで知りました。誠実で心優しい方なのに、それをシニカルでクールに見せてしまうようなシャイな方でした。

山崎さんは、同じ大学の同じ経済学部の先輩であり、住友信託銀行とシュローダーという2つの会社も同じ勤務先でした。

金融資産に関するアプローチの考え方は極めて似ており、資産運用業界の尊敬すべき先輩としてお付き合いを頂きました。

「山崎」という名前のせいかシングルモルトがお好きで、私が経営していたSHINOBY’S BAR 銀座にお越しいただき(写真)、その後一日店長というイベントをお願いしたこともあります。あれからもう8年が経とうとしています。

また、丸の内朝大学マネーコミュニケーションクラスの同窓会ゲストに登壇してもらい、檀上でバトルをしたのも楽しい思い出です。

山崎さんが一貫して金融資産を使った資産運用を提唱していたのに対し、私は10年前から不動産のような実物資産も組みあわせた投資手法にシフトしていきました。

例えば、ワンルームマンション投資について、山崎さんは「1件当たりの投資金額が大きく、流動性も低い。借入を行えばさらにリスクが高い」と語り否定的でした。

私の運用対象が実物資産に広がり「変節」するにつれ、ご一緒する機会が減ってしまったのが残念です。

山崎さんは 50代以降になっても健康診断や会社が紹介する人間ドックに不信感を持っていたそうです。特に、胃の内視鏡検査に忌避感があって、健康診断は多忙を理由に受診しない年もあったと言います。

きちんと検査をしていれば、ガンが早期発見できたとは限りません。ただ、驚いたのは山崎さんほどの合理主義者であっても「とある医師」の意見を何となく信じて、行動していたという事実です。

山崎さんが最後に教えてくれたのは「正しい情報を得ることの大切さ」と「お金より大切なのは健康」というシンプルなことでした。

ご本人の強いご意向でお通夜や告別式は行わないそうです。そんなところも、最後の最後まで山崎さんらしいと思いました。

今までのご指導に感謝すると共に、心からのご冥福をお祈りします。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。