パーティ券問題に端を発し、政治家の報酬や特権に関する議論が熱を帯びています。
果たして政治家は自らを律することができるのでしょうか。
議員報酬や特権の問題は改善不可能
国会議員などの多くの政治家(無投票で当選する議員を除く)は現行の政治システムによって当選しています。そのため自らが当選した政治システムを変更しようとは思わないでしょう。
変更することで当選が難しくなる可能性があるからです。政党や同僚議員からの批判もあるでしょう。そのため、当選の弊害になるものはことごとく排除しようと考えるはずです。
たとえば、「10増10減」は1票の格差を是正するために、次の衆議院選挙からの適用が求められています。「10増10減」の根拠は、定数を人口に応じて増減させる「アダムズ方式」です。本来は決定したルールを変更することはできないはずですが紛糾しました。
政治家は自らが当選に有利になることでないかぎり前向きには議論しないのです。政治システムをかえる法案を提出することもありません。当然のことながら不利になるシステムに変更されることもありません。本腰をいれて実現させようなどと思っていないからです。
進まない議員報酬議論
議員報酬についても同じことがいえます。国政レベルになるとより顕著になります。たとえば、総理大臣になるためには、政党の中で候補者に選ばれなくてはなりません。候補者となり、首班指名選挙で過半数を取得することで初めて総理大臣に指名されます。
もし、その候補者が「議員数を半減しよう」「議員報酬を減らそう」などの方針を打ち出していたら、推薦人はおろか党内総裁選で選ばれることなどありません。国会議員がいやがる政策を出せば党内でつぶされてしまうでしょう。だから、いつまでも堂々巡りになるわけです。
昨今問題視されている文書通信交通滞在費(現在は調査研究広報滞在費に名称変更)が月額100万円支給されます。ただ、領収書の公開などが不要であるため、第2の給与とも呼ばれさまざまな用途に使用されているのが実情です。
以前からそのあり方が問題視されていましたが、領収書による精算が必要ありませんからまったくのブラックボックスです。
文通費はいくらに該当するの
月額100万円の領収書も必要ないお金を一般人が稼ごうとするとどうなるのでしょうか。
所得税の税率は、所得が多くなるほど税率が高くなる累進税率が適用されています。基本ベースの2187万8000円に1200万円(月額100万円×12カ月)が加算されますので、所得税は40%になると考えられます。
月額100万円の領収書も不要な手当を得るためには、約1700万円(月額141万円×12カ月)の収入が必要になるということ、つまりその程度の価値があるということです。
さらに、立法事務費780万円(月額65万円)を加算するとさらに跳ね上がります。
「立法事務費」は「国会議員の立法に関する調査研究の推進に資するため必要な経費」として会派に対して支払われます。1人だとしても政治資金規正法上の政治団体として届け出ていれば会派として認められます。
また、使途公開が義務づけられていません。しかし、国会議員としてまったく活動していなかったとしても「立法事務費」の使い道を第三者が確認する術はありません。
道義的、倫理的責任を果たす、「noblesse oblige」という考え方があります。欧米社会における基本的な道徳感であり、とくに政治家には必要とされている精神です。
国会議員の仕事は、国会で政策を議論し、必要な法律を策定することです。選挙区のお祭りに顔を出したり、運動会に参加することは公務ではありません。このまま、改革が先延ばしになるのでしょうか。国民が注視しなければいけません。