なぜ、能登半島地震の被害全貌把握は遅いのか?

地震の被害、津波の被害が日々伝えられているが、なぜ、全貌把握がこれほどまでに遅いのか疑問だ。能登半島西の輪島市中心部から、東の珠洲市までわずか40〜50キロメートルだ。元旦の夜に衛星から見れば停電の状況はすぐに把握できたはずだし、2日朝からヘリコプターやドローン・飛行機で上空から調べれば、道路の寸断状況を含めて被害状況は把握できたはずだ。

地震で倒壊したビル NHKより

それぞれの地区の人口もわかっているはずだし、帰省をしている人たちを含めた被災者のおおよその数も推測できたと思う。阪神大震災や東日本大震災などを経験した国として、いったいどのような危機管理マニュアルができていたのだろうかと疑問だ?すぐに大津波警報を発していたのだから、珠洲市での津波がどうだったのか、2日には詳細を調査するべきであったが、動きが遅い。

危機管理において、正月休みだったという言い訳は通用しない。もし、これが外国からの侵略であった場合と考えると背筋が凍る思いだし、あまりにも危機意識に欠けていると言わざるを得ない。非常事態の人員確保、救援物資の輸送などのマニュアルが何もなかったのかとさえ思わせるような状況だ。シビリアンコントロールは必要だが、コントロールできる有能な人材があっての話だし、コントロールできる人材がいないような体制ならば、すべて自衛隊に任せればいいのではと思ってしまう。

緊急事態においては、指揮命令系統の一本化が極めて重要だ。東日本大震災時の初動の遅れはまさに未熟な政権幹部のドタバタの反映だった。

今回、被災され、避難された方々が孤立して、水も、食料も、暖もない状況で過ごされている。陸路からの支援が報道されているが、空からの支援はあまり目にしない。いろいろな配慮があってのことだとは思うが、無事避難できた方々の健康と命を守ることを優先して欲しいものだ。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。