山本太郎は情弱を食い物にして選挙制度のバグを利用する

池田 信夫

この投稿が300万インプレッションを超えたので、ちょっと補足しておこう。国会で「能登半島地震の現地視察は交通事情が悪いので自粛する」という6党合意ができたあと、地震の現場に車で乗り込み、被災者用のカレーを食った山本太郎について、私はこう書いた。


れいわ信者から「差別だ」というクソリプが山のように来たが、境界知能は知的障害ではなく、差別用語でもない。それはこの図がNHKのウェブサイトに出ていることでも明らかだ。

れいわ信者は論理的に思考できない情報弱者

特定のグループをターゲットにするセグメンテーションも、マーケティングではありふれた手法だが、目新しいのはそれを政治に応用したことだ。常識的には、政党の目的は過半数の支持を得ることなのでセグメンテーションは無意味だが、55年体制の社会党は、中選挙区で1議席とるために労組の支持者をターゲットにした。

これは政権をとるためではなく、労組幹部の論功行賞として選挙制度にただ乗りしたものだ。このようなフリーライダーをなくすためにできたのが小選挙区制だが、そのとき妥協の産物として比例代表ができ、これが新たなただ乗りの温床になった。

山本は最初は反原発をあおって当選し、それが飽きられると消費税廃止などのバラマキで、複雑な推論の苦手なIQの低い人をあおっている。参議院では比例代表は50議席もあるので、50人に1人ぐらい彼のレトリックに引っかかる情報弱者がいればいいのだ。

さらによくなかったのが、小選挙区制と同時にできた政党交付金である。これは政治献金をなくすために「国民ひとりコーヒー1杯分」を助成しようという趣旨だったが、結果的にはれいわのような泡沫政党でも、議員ひとり毎年1.6億円の政党交付金が出る。議員報酬を含めると2億円以上である。

今回の地震でも、れいわ信者は山本のスタンドプレーをほめている。こういう選挙運動にはコストはほとんどかからないから、政党交付金は丸もうけだ。同じような発想で、NHK党や参政党など交付金目当ての党が出てきた。

政党交付金という「制度のバグ」のハッキング

これは制度のバグなので、選挙制度を変えるしかないが、政党交付金は既得権になってしまったので、変えられない。当初なくす予定だった政治献金もなくならず、いま問題になっているパー券は政治家の裏金になっている。

このような制度のハッキングは必ずしも悪いことではない。どんな制度も最初から完璧ではないので、バグが見つかったらなおすべきだが、立法府が自分をしばる法律をつくるのはむずかしい。

裏金問題をきっかけに、また政治とカネの問題が注目されている。企業献金の隠れ蓑になっている政治資金パーティを全面禁止しろという意見もあるが、そうするとこのような政党交付金へのただ乗りが増えるおそれがある。

解決策は、選挙制度を抜本改革するしかない。たとえば衆議院は全議員を小選挙区制、参議院は全議員を比例代表で得票率10%以下は失格とし、泡沫政党は当選できないようにするのはどうだろうか。

今回の裏金問題を単なる金銭スキャンダルで終わらせず、建設的な制度改革に結びつける必要がある。れいわのように政権をとる気も能力もないフリーライダーを追放することも、改革の一つである。