気になる中国:きな臭さはいよいよアジアに転移するのか?

2年ぐらい前に台湾危機が起こるとすればいつか、という話題を振りました。その際に私の予想は2024年前半と申し上げたかと思います。理由は台湾総統選の後でアメリカが大統領選挙で外交的に動きづらいから、というのが主たる理由でした。あの時から台湾をめぐる情勢は多少は変わってきているのでその当時の意見は今では無効だと思っていますが、それでも別の意味で今年の中国は嫌だな、という気がしています。

一般的に国家の指導者は何かうまくいかない政策があれば国民の目線を変える為に違うことにフォーカスすることがよくあります。不人気のブッシュ大統領(当時)がイラク戦争に突き進んだ時、支持率は70%を超える状態になりました。プーチン大統領のウクライナ侵攻も国内経済情勢の行き詰まりもあり、目先をそらす意味もあったでしょう。イスラエルのネタニヤフ首相は首相を降りれば逮捕が待っているかもしれないという話もあります。もともと収賄や背任で検察が待ち構えているとされ、自身の政策に国内からの反発も多い中で今のハマスせん滅作戦は保身的意味もあるでしょう。

国家の指導者の保身という点から考えれば習近平氏は現在の世界の指導者では筆頭候補の一人です。国内経済が上向かず、不動産のしがらみは重くのしかかります。同じ不動産処理問題で日本は90年代にゼネコンやデベロッパー、金融機関がその重みから解放されるまで概ね10年強かかっています。しかもそれは倒産が資本主義的に実行される日本での話です。

習近平国家主席 共産党新聞2023年12月29日

中国の場合、企業を倒産させるかどうかは国家の意思で決まります。噂される多くの大手不動産会社がゾンビの如く未だに生き残っているのは政府が潰させることにOKを出さないからであります。つまり、西側基準であればとっくに倒産ですが、違うルールが適用されているので形式上、倒産には至っていないのです。ただ、中途半端な生かし方を続けるとどうなるか、ズバリ申し上げるとその影響は極めて深刻で長く続き、永遠の足かせのようになると申し上げます。

では習近平氏はなぜ倒産承認をしないのかといえばメンツの国故にプライドが許さないのです。もしも噂される大手不動産会社を中国国内法に基づき、倒産させたとしたら私は「習氏、やるねぇ」と申し上げます。彼に度胸があるのかないのか、バンジージャンプのスタート台に立っているようなものです。

私が怖いのは国内情勢がよくないことは周知の事実の中、覇気がなくなってきた国民に対して習氏がなにか刺激策を考えてやしないかという点です。これはどこで何が飛び出すかわからないのであります。

まず台湾の総統選については週末にも結果が出るのでそれ次第です。国民党候補が勝てば時間をかけた台湾政策になる一方、民進党が勝利すればせっかちな外交政策を展開せざるを得ないでしょう。選挙直後から威嚇を含めた嫌がらせがあってもおかしくありません。ただ軍事侵攻は今はないと思います。

中国を取り巻く国境問題は台湾に限りません。フィリピンと南シナ海の領有をめぐる争いは着実にエスカレートしており、船舶に衝突させるなど威嚇を続けます。ミャンマー国境でも同国の少数民族と軍の戦いに中国の特殊詐欺グループが絡んだ奇妙な構図の中で緊張が続きます。中国とインドの国境紛争は1950年代から続くものであり、中国はどの紛争についても独自の世界観と判断基準で自己都合な姿勢を示し続けています。

もし、習近平氏が国内政策に更に詰まるようであれば更なる国民への目線を変えさせる刺激が必要です。それをするならどこが一番良いのか、といえば日本はやりやすく効果的と考えている節はあります。

中国から見て一番手出ししやすいのは尖閣でありますが、無人島を実効支配するために人を上陸させ、常駐させる可能性はあります。竹島と同じシナリオです。嫌な記事だったのが12月30日の産経の「習氏、尖閣で闘争強化指示『1ミリも領土譲らぬ』 日本漁船臨検も」であります。これは中国のメンツにかけて尖閣を奪い取るという姿勢の何物でもありません。

ではなぜ今このタイミングで習氏はそんな指示を出したのでしょうか?見方の一つに自民党の不祥事が続き、日本の政治そのものが体を成さない状態がしばらく続くので尖閣で揺さぶっても日本は何もできないだろうと足元を見られているかもしれません。実際に中国に対して正面切って正々堂々と啖呵を切れる政治家は現在思い当たりません。割と思いっきりの良い上川外相ですらそこまでは出来ないでしょう。池田大作氏が無くなった公明党も中国との関係は細るでしょう。親中派の二階氏も渦中にあります。かといってアメリカはウクライナにすら援助できない中、イスラエル支援でも苦慮している中、三面対応はほぼ無理。

その辺から考えていくと2024年の国際情勢の重要なカギを中国が握っているともいえます。従来は政治と経済は別建てという考え方も出来ましたが、今では中国のスパイ法や水産物の締め出しなどビジネスに政治問題をかぶせているわけで日本の民間企業も進出リスクを改めて考えざるを得なくなるでしょう。きな臭さはウクライナ、イスラエルからいよいよアジアに転移するのでしょうか?心配でなりません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月9日の記事より転載させていただきました。