シン・バラバラになる世界

少なくとも2年前にロシアがウクライナに侵攻するまでは世界のほとんどの国にとって戦争、特に地上戦などをすることは圧倒的抵抗がありました。一方当時のロシアの認識は違うと考えています。彼らは2014年3月のクリミア併合の続きのプロセスでしかなく、それを更に推し進める為に実力行使に出たとみています。

衝撃の行動に多くの人々はロシアは何処までやる気なのか、様々な憶測が出ました。中には第三次世界大戦に展開するという意見も散見できました。その中で私は「これは地域紛争」と意見しており、それに対するご意見も沢山頂戴しましたが、ほぼ2年経った今、やはり「地域紛争」という見方が濃厚だと思っています。

この戦争の本質は何か、と言えば思った以上に単純でロシアからクリミア、ひいては黒海ルートの絶対確保、これに尽きるのだとみています。なのでロシアからすれば首都のキーウは本質的には興味がないのですが、適度な打撃は必要であると考えているのでしょう。

ロシアがなぜ、そんな行動に出たのか、と言えば1991年に失ったものの一部を取り返すことであり、ロシアにしてみれば自国都合の理論であり、誰もそれに同意できないわけです。ただ、プーチン氏にとっては誰かに賛同を求めているのではなく、ロシア流解釈のもとそこに正当性を見出せばよいだけの話なのです。

世界の指導者たち 各紙・各政党HPより

アメリカの大統領選挙。これもバラバラになる世界の象徴だと思います。トランプ氏も自己都合の理由があまりにも強すぎます。トランプ氏の公約には耳障りがよさげなものもありますが、基本的には自分と自国の都合が並びます。国際協調も国際貿易も国際協力も必要ないのです。アメリカは我が道を行く、それだけです。一方のバイデン大統領もなぜ、あの年齢、あの体力、あの判断力で再選を狙うのか、なぜ、後進を育てないのか、これまたずいぶん身勝手な大統領だと思います。副大統領の名前をまだ覚えていますか?カマラ ハリス氏ですがほとんど存在感が無くなってしまいました。

身勝手の王様と言えば中国を差し置いて他にはないと思います。公海は中国のものという発想の根源が何処から来るのでしょうか?多分、中華思想に基づく中国を中心とした無限の広がりというロジックだと思いますが、もちろん、そんな発想は他国と相いれません。ですが、習近平氏は気にしないのです。自分が正しいと。それは冒頭のロシアの論理とも一致します。

今日のタイトルを「新 バラバラになる世界」とさせて頂いたのは、実は2016年5月16日に「バラバラになる世界」というタイトルでブログが書いてあるのです。しかも7年8か月前に述べた状態からより深化こそすれどベクトルとしては全く変わっていないのです。

その時のポイントは判断が国家から国民に移ってきたということでした。SNSの広がりにより瞬時に情報が伝わり、国民がそれなりに声を上げるようになったと考えたわけです。英国のEUからの離脱や古いですが、北アフリカの春もその動きでした。今回のアメリカの大統領選挙も国民の声のぶつかり合いという色合いも強く出ています。

それから8年近い歳月がたって見えたのは大国が振りかざす自国の論理です。これは非常に不都合な問題です。国連の機能の問題が取り沙汰されますが、私は今や国際法が何であるか、世界共通の概念とルールすらなくなりつつあるように思えます。また自己ルールは時として大国のみならず、北朝鮮やミャンマーという比較的小国でも起きています。

これを解決する方法はあるのでしょうか?究極的には世界にいろいろある政治制度を全ての人類が自由に選択できるようになれば嫌な国に留まらない自由は生まれます。が、もちろん、こんなのは机上の空論にもなりません。なぜなら国家と民は一心同体であり、国民無き国家という概念は成立しないからです。

私には解決策は浮かびません。できることは少なくとも人々が置かれている環境を理解し、どうあるべきか考え、各自が対策を打ち出すことになりそうな気がします。かつてはストライキやデモという大衆行動もありましたが、私にはそれも20世紀までの抗議の仕方にしか見えないのです。そもそも大衆行動は社会が成熟し、情報化が進めば一体感が作りにくくなるわけでルールの制定者には好都合であります。歴史を紐解けば農民一揆などは年貢の納め方に対する農民の抵抗でした。今では文句こそ言えど、そのようなカラダを張った抵抗はしないですよね。

バラバラになる世界、それは世界の関係がそれだけ複雑になったともいえるのでしょう。そしてシンプルな世界に戻ることもないのです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月15日の記事より転載させていただきました。