派閥解消を引き金に自民党の世代交代を進めたい

時代の中核的世代が政治を担え

政治資金の還流疑惑事件で、東京地検特捜部は安倍、二階、岸田派を立件したものの、会計責任者らだけを起訴し、幹部議員は見送りという尻切れトンボの幕引きになりました。検察も自民党も正体を見せたのです。

予想された通りの結末になる一方で、安倍派(96人)、二階派(38人)、岸田派(46人)の3派が派閥解消を決めるという予想外の決定が飛び出しました。政治の流れとしては、こちらのほうがはるかに大きな重みを持つことになるかもしれません。

「派閥は解消しない」と言っている麻生派(56人)、茂木派(53人)はいつまでもちますか。そういう態度を取ってくれていたほうが問題の根深さを理解するのに役立ちます。

「どうせ派閥は復活してくるさ」かもしれません。私は、今回の展開は政界の激震の始まりであると思います。また、始まりにしなければならない。特に自民党政治の大改革につなげていかなければならない。

検察も途中下車でした。それが3派閥の解消という展開になって、意図せざる戦果をもたらしたということでしょうか。

自らは自浄作用を持たない自民党政治に対し、資金疑惑に対する世論の風圧は強く、相当なことをしないと支持率は回復しない。自民党改革に対し、滅多にない契機が訪れたと考えるべきだと考えます。また、そうした契機にしなければなりません。

政界情報屋みたいなジャーナリスト及びそのOB、地検特捜部OBの元検事らのもっともらしい解説などは聞き飽きました。まともな論者なら、これを契機に政界をどう刷新して、日本再生につなげるかという視点を示してほしい。日本は先進国ではなく、衰退国と言われるほどの危機です。

財政・金融政策を身動きがとれない袋小路に追い込んでしまったアベノミクスの巨大な負の遺産、円安による物価高に苦しむ国民の暮らし、円安で日本のGDPはドイツに抜かれ4位に転落、一人当たりGDPは韓国以下などです。永田町ではなく、世界を見る目を持った政治が必要です。

政治の責任が大きい。世界が流動化しているのに、永田町という「町内会」の意識で政治をやっている。野党も与党を追及して、失点稼ぎをすることばかりに全力投球をしている。野党も「町内会政治」です。

経済界も小粒になりました。もっと大きな声をだして、政治の再生の提言をしほしい。政府から「もっと賃上げをせよ」といわれ、やっと動き出す。情けない。こんな企業のトップばかりでは、世界市場で勝てない。

小さな視点で裏金疑惑を考えてはいけない。政権をとりたい、閣僚ポストをとりたいから、派閥の議員数を増やす、そのために政治資金の不透明な使い方を辞さない。最大派閥の安倍派の不記載の総額は13億5千万円と、群を抜いていたのはその結果でしょう。

岸田首相は「信頼回復に火の玉となる」と断言しました。解散風をちらつかせて、派閥解消の徹底、政治資金規正法の厳格化、政治資金パーティーの制限などを進め、「そうでもしないと、総選挙で敗北する」「派閥に所属したままだと落選しかねない」と、緊張感を走らせたらよいのです。

これを契機に、政界を動かす舞台裏の手練手管には長けた老齢議員を退陣に追い込む。河野太郎氏総裁選出馬に自制を求め続けた麻生氏、いつまでたっても引退しない二階氏、引退後も安倍派を操った森氏は、危機感を募らせているに違いありません。

もちろん派閥解消で全てが解決することはありません。改革の糸口にしていくのです。

その時代の中核的な世代を代表する人たちが政界で支配的な勢力になっていってほしい。安倍派の解消で「安倍派5人衆」という呼称も消える。安倍派でも中堅、若手議員が「5人衆」や執行部を激しく突き上げました。他派でも、世代交代を進めてほしいのです。

秋の総裁選には、次の世代の人たちが多数、立候補してほしい。派閥のボスの妨害はもうないはずです。派閥間の密室の談合ではなく、日本の政治、経済の再生の政策論争を公開してほしい。小泉進次郎氏のような人気だけの人物は勘弁してほしい。

自民党の各派閥以下の議員数しか持たない各野党は、見くびられ自民党の対抗勢力になりえてきませんでした。「打倒自民党」野党連合を組み、圧力をかけたらどうなんでしょう。野党にとっても、滅多にないチャンスが来ました。そのほうが緊張感が走ります。

政界、自民党政治の活断層が現れています。小粒な議員しか出現しない小選挙制度の改正、政治資金の透明化、あら探しに徹している国会審議の改正、官僚組織に圧力をかけることには長けた官邸の改善などを進め、大きなビジョンを持って日本の再建に取り組む政治にしてほしい。

自民党本部 自民党HPより


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。