「極右」政党という呼称は正しいか

当方はこのコラム欄でドイツの政党「ドイツのための選択肢」(AfD)やオーストリアの政党「自由党」(FPO)について書く時、両党を「極右政党」として紹介してきた。それに対し、読者からは、「極右」という表示は正しいか、「右派」と呼ぶべきではないか、といった趣旨の意見をもらってきた。

AfDの思想的リーダーの1人、ビョルン・ヘッケ氏 Wikipediaより

外国の政党を紹介する時、その政党名だけではその政党が保守派か、中道右派か、それともリベラルか分からない場合がある。最近はどの国でも多数の新政党が登場しているから、政党名だけでは左派か右派か判断できない。そのため、その政党が活躍する現地のメディアの政党への表示を参考にして「右派政党」とか「左派政党」といった呼称を利用する。

例えば、ドイツの大多数のメディアはAfDを過激な民族主義的政党として、極右というレッテルを貼って報じるし、オーストリアのFPOに対しても同様で、イェルク・ハイダー党首時代から「極右政党」、「ネオナチ政党」といったレッテルを貼ってきた。ネオナチ政党という表示は流石に少なくなったが、現地メディアはFPOを極右政党と呼ぶ。

もちろん、党綱領を一読すれば、その政党が右派か左派かは判断できるが、中道右派か中道左派といった詳細な識別をする場合は簡単ではない。政党も外交、安保、経済など分野によってリベラルであったり、保守的な政策を標榜したりするから、政党の表示は難しくなってきたのだ。

ドイツ連邦議会で先月31日、ワイデルAfD共同党首が演壇で、「他の政党はAfDといえば常に過激な極右政党と呼び、中傷してきた」と述べ、「極右政党呼ばわり」に苦言を呈していた。政党を極右と表示することで、その政党が過激な民族主義的思想を標榜している政党と受け取られるからだ。例えば、AfDの強制送還を含む移民政策は今日、「キリスト教民主同盟」(CDU)でもほぼ同じ路線だ。与党「社会民主党」(SPD)の中にも厳格な移民政策の必要性を理解している議員が少なくない。オーストリアのネハンマー首相の率いる保守政党「国民党」の移民・難民政策は自由党とほぼ同じだ。しかし、CDUや国民党を極右政党とは呼ばない。

AfD(ドイツのための選択肢)のティノ・クルパラ共同党首とアリス・ワイデル共同党首 AfDインスタグラムより(編集部)

AfD関係者は昨年11月25日、ポツダム近郊のホテルで欧州の極右関係者と共に会合し、移民・難民の強制移住計画などについて話し合った。そこで第2次世界大戦の初め、ナチスがヨーロッパのユダヤ人400万人をアフリカ東海岸の島に移送するという「マダガスカル計画」を想起させる「モデル国家」論が参加者から飛び出したというのだ。

AfDで思想的に影響力のある人物の1人、チューリンゲン州議長のビョルン・ヘッケ氏は国家社会主義の言葉を彷彿とさせるレトリックを常用し、国家社会主義に基づく専制政治を公然と主張している。ドイツの基本法は「ドイツ国籍を有する者はすべてドイツ人」と明記しているが、ヘッケ氏はそれを認めていない、といった具合だ。単なる外国人排斥政策だけではない。反憲法、反民主主義、反ユダヤ主義的な世界観を標榜している限り、AfDを極右政党と呼ぶ以外にないだろう。

ちなみに、ドイツとオーストリアの場合、ナチス政権時代への歴史的反省といった意識もあって、民族主義的、外国人排斥的、反ユダヤ主義的傾向のある政党に対して伝統的な右派というカテゴリーではなく、「極右」というレッテルを貼ることで、その動向を警戒する面がある。

参考までに、新約聖書の話を紹介する。イエスが十字架に架かった時、2人の強盗が同じように十字架に架かっていた。左側の強盗はイエスに、「お前はキリストではないか、それなら自分を救い我々も救ってみよ」とうそぶいた。すると右側の強盗が、「何を言うのか。われわれは自身の悪行の結果、十字架にかかっているが、この方は何も悪いことをしていない」と述べ、イエスを慰めた。イエスは右の強盗に、「あなたは今日、私と共に楽園にいるだろう」と述べている。

上記の話は新約聖書「ルカによる福音書」第23章に記述されている。左の強盗は神を信じない無神論世界に生きる人間を象徴し、将来生まれてくる共産主義者を予示していた。共産主義者を“左翼”と呼ぶのは左の強盗から派生している。一方、右側は神を信じる民主主義の登場を示唆し、右翼という表現はこの右の強盗に起因している。

左翼の人は「なんといった暴言だ」と批判するかもしれない。一方、右翼の人は「イエスと共に天国に行けるのはいいが、私はイエスも神も信じていないよ」と言うかもしれない。左翼も右翼もその出自は同じ強盗だ(『『右翼』も『左翼』もその出自は強盗だ」2015年12月12日参考)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年2月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。