自己PRを間違えると事故PRになる

黒坂岳央です。

誰しも仕事やプライベートの場で「自己PR」をすることがある。自分はどういう人間で強みは何でどんな実績があるのか?こうした自己紹介である。

恐ろしいのは自己PRの見せ方を知らずに事故PRになってしまうケースだ。そして基本的に事故っても誰も指摘も注意もしてくれない。

FotoSpeedy/iStock

ある営業マンの「事故」PR

先日、オンラインで商談をすることがあった。相手の話をフムフムと聞いていたのだが、途中から相手の自己PRタイムが始まった。「過去にテレビ番組の出演と出版もしています! フォロワーもたくさんいるインフルエンサーです!」という。つまるところ、自分はこの分野の実力者でこれだけ実績がある傾聴に値する人物だと鼻息荒くPRをしているのである。

あまりに自信満々にいうので、話が終わった後に興味が湧いてググってみたら商業出版ではなく「自費出版」であり、テレビも地上波ではなく有料出演と思われるプロモーション色の強い番組だとわかった。インフルエンサーというが、フォロワーが1万人くらい。上から目線でバカにするつもりはまったくないが、PRの強さと実績に落差を感じなかった、といえば嘘になる。

テレビも出版もお金を出して出えば正直、誰にでもできる。メディア関連に詳しい人間なら「ああ、お金を出して実績を購入したのだな」と察する。また、インフルエンサーというのは最低でも10万人以上だろうし、加えて人数だけでなく実際にインフルエンス力がないと張子の虎に思える。

こうしたPRの問題点は「伝える勢いと実績の釣り合いが取れていない」ことにある。自分はすごい!というPRだと、聞く相手の期待値をいたずらに引き上げてしまう。期待値以上の実績がPRできるならありだと思うが強すぎる自己PRは避けたほうが無難だろう。

「自分はお仕事のこの部分についてはきっとお力になれると思います」など、控えめでも一緒に盛り上げていこうという前向きな姿勢が見える方が相手に好感を持たれるのではないだろうか。

実績と実力の乖離リスク

昨今、「バレなければ勝ち」と言わんばかりに、経歴詐称をする人が多いと感じる。後出しジャンケンのようだが、自分は詐称が暴露される人の投稿に初期の段階から違和感を覚えることが多い。

専門家ならケアレスミスでは片付けられないレベルの、致命的な知識、技術の不足や勘違い。語気は強くてもどれも抽象的でロジカルさが欠如していたりするなど、「本当に周囲がもてはやすような実力者なのか?」という違和感を覚えることがあるのだ。

たとえ詐称までいかずとも実績の盛り過ぎは気をつけた方がいい。見る人が見れば等身大ではなく、つま先立ちで背伸びをしているのがわかってしまうからだ。昨今、誰でもSNS発信ができるので、あまりに背伸びをしすぎると望まぬ暴露や指摘で高まった期待感の分だけ「なーんだ、大したことないじゃないか」と失望を呼び込むことになる。

もしかしたら等身大でコツコツ実績を育てるやり方は遠回りに思われるかもしれないが、結局持続性がなければ何の意味もない。実力不相応の自己PRは事故PRになってしまうのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。