いろいろなお店で外食をする機会がありますが、お寿司屋さんや懐石料理のお店のような伝統的なお店のオーナー(親方)の仕事のぶりを見ていると2つのタイプがあるように感じます。
1つは職人気質の料理人です。お店を繁盛店にして、規模を拡大し儲けることよりも、自分の満足できる店づくりを目指す。ストイックにクオリティーを高めることに注力するパターンです。
もう1つは商人気質の料理人です。職人としてのクオリティーを維持しながら、飲食店をビジネスとして捉え、規模や収益の拡大を狙う。マーケットに合わせて柔軟に対応できる人です。
職人気質の料理人の方が良いとは限りません。1人よがりで、客が萎縮してしまうような緊張感をもたらす気難しい料理人は、腕が良くても私は好きにはなれません。
逆に商人気質の料理人は、金の亡者のような悪い印象を持つかもしれませんが、私は嫌いではありません。
飲食業も資本主義社会において利益を追求するビジネスの1つであり、顧客に高い満足度を提供し、高い収益を上げるのは、商売の基本と言えるからです。
親方に華があって、客あしらいが上手い。1年も2年先の予約を受け付け、価格をしっかり上げていく。お土産やコラボ商品なども企画して売り上げを伸ばしていく。メディアの露出も積極的で、SNSも活用している。
こんなお店は、間違いなく商人気質の人がやっているお店です(笑)。
日本では、懐石料理のような伝統的な飲食店だけではなく、美術関係のアーティストやクラシックの演奏家のような人たちにも、職人気質を求める傾向があります。
例えば、現代アートの作家さんやクラシックのピアニストのような人が、商売っ気を出して営業を始めたり、作品から多額の利益を得たりすると嫌悪感を示したりするのです。
すべての職業は、その人の努力や才能に対し、対価を払うものであり、飲食店の料理人やアーティストも同じです。特定の仕事だけを特別視するのは間違っていると思います。
商人気質で成功した大金持ちの料理人やアーティストが日本にもたくさん生まれ、商人気質の職人が憧れの職業になるような時代が来て欲しいと思っています。
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年2月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。