投資は「あぶく銭稼ぎ」ではなく「社会貢献」

Aekkasit Rakrodjit/iStock

資産運用の仕事をしていて未だにに困惑するのは、投資とはギャンブルのようなものと思い込んでいる人が多いことです。

投資をしていることが何だか悪いことをしているような気がして、人に言えない後ろめたい気持ちでいる人が多いのは、とても残念なことです。

多くの人の投資の目的は資産を守り増やすことですが、その結果が社会貢献につながることをきちんと理解すべきだと思います。

例えば、株式投資された資金は、その企業の設備投資やサービスの改善に使われます。良い商品やサービスが提供され、投じた資金が社会にとって有益に活用されれば、その会社の企業業績は上昇し、株価の上昇から利益を得られます。

株式投資のリターンとは、投資によって社会の改善に貢献したことに対するマーケットからの「感謝の印」と考えることができるのです。

投資家がリスクを取って投資先に資金を投じることの見返りにリターンとなって戻ってくる仕組みがあるからこそ、リスクを取ることが報われます。それが、新しいチャレンジに対するインセンティブとなって、技術進歩や新しい商品の開発を誘発するのです。

リターンがなければリスクを取る投資家がいなくなり、イノベーションは停滞し、世の中は今ほど豊かにならなかったでしょう。

また、投資には、世の中の「歪み」を修正していく機能があります。日本国内の資金が海外に流出するのは、国内で供給過剰な資金を、供給が足りない場所に提供するという需給の「歪み」の修正です。

ギャンブルと投資の1番の違いは、ギャンブルからは新しい価値が生まれないことです。ギャンブルとはギャンブラーのお金を集めて、そこから胴元が手数料を引いて、残りを再配分しているだけだからです。

しかし、投資の場合は集まった資金から新しい価値が生まれます。ギャンブルの期待値は絶対に1を超えませんが、投資の期待値は新しい価値が生まれれば1を超え、投資家全員に利益をもたらす可能性があります。「1+1=3」の世界なのです。

2つの違いが理解され、「投資=ギャンブル」という偏見が早く解消され、投資の社会的意義も評価される時代が来て欲しいと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年2月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。