世界の巨匠、小澤征爾、逝く。本当に残念です。日本の財産、世界の財産でした。ガンを含め長いこと病との戦いをされていました。小澤氏は音楽の世界では日本の存在がまだ薄かった欧米で才能を開花、カラヤンやバーンスタインといった巨匠との縁が氏をさらに大きなものにしたと思います。誰もやっていなかった欧米で挑戦、そして自身で切り開いてきた道は音楽の世界だけではなく、人間小澤征爾としての評価をすべきでしょう。近年は若手の教育にも力を入れていたとのこと、やるべきことを全うされたと思います。素晴らしい生き様でした。合掌
では今週のつぶやきをお送りします。
株価に騙されるな、危険のフロスに気をつけよ
日経平均が一時37000円を大きく超え、株式市場では強気の声が聞こえてきます。ですが、市場をよく知る人なら冷たい目線で見ているはずです。木曜日の日経平均は743円上げました。しかし上げた株は584銘柄、下げたのが1013銘柄です。翌金曜日は日経平均34円高に対して上げた株が565銘柄、下げた銘柄が1048銘柄です。以前から何度も申し上げているように今は指数相場で日本の景気全体を表しているわけではないのです。極端なことを言えば木曜と金曜の株価上昇はソフトバンクG効果が大きいのです。決算もあるのですが、子会社のアーム社の決算が評価され株価が一日で一時60%を超える上昇をして90%のアーム株を所有するソフトバンクGの含み益が増えたことが大きいのです。
アメリカの株も過熱感が高まり、一部ハイテクについては明白に上げ過ぎでエヌビディアがアマゾンの時価総額に接近しており「スピード超過」とされます。一方でニューヨーク コミュニティ バンクコープ(NYCB)が商業不動産向け融資の引当金を積み増し、配当を下げ想定外の赤字決算となり株価が大暴落しました。パウエル議長も金融機関の歪みが起こりうる可能性を指摘しており、地銀業界については昨年と同様の展開となるのか注目です。雇用統計にまだ出てこないですが、大手ハイテクはリストラを強固に進めており、AIなどが職を奪う形になりつつあります。とすれば3月ぐらいからやや深めの調整に入る可能性はあるとみています。
日本については気になるのが為替でこれを書いている時点で149円台半ば。日本の3連休で取引が薄くなるので一気に150円台をつけるとなれば「円安祭り」をしている場合でもないと思います。一方日銀は3月ないし4月に政策変更をする公算が高く、市場は大きく振り回されるとみています。日本の倒産件数は1月が前年同月比28%増の700件で個人事業主や中小の自主廃業を含めればかなり厳しい数字です。日本でも弱肉強食と主役交代が進んでいると言ってよく、コロナのゼロゼロ融資の返済の行き詰まりを含め、まだら感が非常に強い2024年前半の経済が見て取れます。要注意です。
まだ断言はできないが、クルマの売れ行きは明白に変わった…
カナダの業務用でトヨタ シエナ ハイブリッドを購入しようとディーラーに電話をしたら笑われました。「そんなの、いつ納車できるかかわからない、だけどクラウンなら在庫はあるぞ!」と。知り合いのクルマ屋に聞いたらミニバンのような売れ線ではない車種は製造も納車も廻ってこないから2年待ちだと。とはいえ、何もしなければ永久に買えないのでコネを使って早めに廻してもらうよう画策しました。私がGTRを買った時でさえ1年待ちぐらいだったのに一体何なのだろうと思います。アメ車には似た車はありますが、ハイブリッドではないのでそれはダメ。今はハイブリッドにこだわります。
実はハイブリッドのクルマが大リベンジをかけているのは中国だけでなく、欧州、そして直近のフォードの決算にもみられたように明らかに世界でクルマの売れ線に変調が感じられます。ハイブリッドと言えば日本のお家芸で圧倒的強さをここから見せそうです。聞こえてくるのはEVの使い勝手が必ずしも便利ではなかったこと。テスラの評価が下がっているのはEVしかない同社の企業戦略が時代の流れにマッチしなくなった場合のリスクであります。EVについてはBYDが市場を侵食しており、アップルとサムスンのスマホ戦争の二の舞すら感じられるようになりテスラの収益も圧迫しそうです。
クルマがどのように進化するのかについては紆余曲折がありそうと申し上げたと思いますが、EVが環境問題に照らし合わせ政治主導で進められたのに対してハイブリッドは欧米で上手く作れないことから「そんな車はダメ」という烙印を政治的に決定したのでした。が、消費者は必ずしも政治主導で補助金まみれのEV政策に「そこまで熱くなれなかった」のでしょうか?クルマをどのように使うか、ガソリン代が生活費に響くほど乗るのか、週末ドライバーなのかでもずいぶん変わるでしょう。ハイブリッドはチョイ乗りなら経済的であることから消費者の判断はそこにあったのかもしれません。このトレンドはまだ断定はできないですが、確実にその兆候は見て取れます。
窮地に陥るゼレンスキー氏
ウクライナ問題については私は戦争の悲惨さとは別にやや冷めた見方をしてきました。それは開戦してしばらくしてから見えたプーチン氏とゼレンスキー氏の意地の張り合いが「親子喧嘩」のようにしか見えなかったこともあるでしょう。何度か浮かんだ休戦調停の話も両者の掲げる条件が問題解決に何一つ助けにならず、これは「根気比べ」になるなとみていました。案の定、欧米は「支援疲れ」が明白になります。欧州は先日、8兆円規模のウクライナ向け支援を決めましたが、これは前線向けというより後方支援、つまり国家再建への支援なのです。
一方、ゼレンスキー氏側から聞こえてきた「醜聞」が国民人気が高かったザルジニー総司令官を解任したこと。ウクライナは大統領選挙が本来であれば3月に行われるところでしたが、戦争中ということで休戦まで延期する公算が高いようです。その大統領選、国民の下馬評はザルジニー氏を88%を信用し、ゼレンスキー氏は62%に留まったのです。大統領選に誰が出馬するのかを論じるのはまだ早いですが、ゼレンスキー氏もプーチン氏と同様、大統領選に向けてライバルを無力化しているような余裕があるのかと聞いてみたいものです。
戦争は持久戦。プーチン氏は自身の3月の大統領選に向けて余裕の様子。昨日、元FOXテレビのホスト、Tucker Carlson氏がプーチン氏と開戦後初めてメディアと単独の2時間インタビューを行っています。インタビューそのものはメディアが「プーチン氏、カールトン氏にウクライナ戦争を講義(lecture)」と叩きまくっており、プーチン氏は明らかにリラックスした会見でした。その中でトランプ氏が大統領になったらという質問に「俺はトランプさんとは知り合いよ」と軽く答えています。客観的に見るとプーチン氏が勝つというより私はゼレンスキー氏の粘りがもう限界まで来ている、そのように見えてしまいます。
後記
来週水曜日から8日間東京です。今回もちっとも楽しくない超過密スケジュールで新宿区、渋谷区、港区、江東区に千代田区にしか行きません。コンベンションで商談もあるし、国をまたいだビジネスディール、更には教育関係の会議も2本あります。過密と言えばエアカナダのクルーが嫌がるのが東京便だそうで、理由は狭い機材で客は常に満席で忙しすぎるからと。客の大半は日本に行くカナダ人と中国に向かう中国人。理由は中国直行便がほとんどないので東京で乗り継ぎです。そりゃクルーだけじゃなくて客も窮屈なんですよ。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月10日の記事より転載させていただきました。