ひとりで越えたの 天城越え

伊豆を巡る旅が続いています。

今回訪ねたのは伊豆半島南部にある河津(かわづ)町。この季節に花を咲かせる早咲きの桜・カワヅザクラ発祥の地です。カワヅザクラも有名なんですが、まずは遊歩道が7つの滝を結ぶ河津七滝を目指します。

車で河津町に行く最短ルートは沼津インターから伊豆縦貫自動車道を通るルート。沼津インターから半島の先までずっと無料なのかと思っていたら、途中伊豆中央道と修善寺道路が有料で200円ずつ取られます。一本の高規格道路と思えるような道路の中に有料道路と無料道路が混在するわかりにくい道路です。

そんな道路を通って河津町に向かいますが、途中通るのが「天城峠」。山がちな伊豆半島の中でも天城山のあるこの辺りを超えるのは最大の難関でした。人々はこの旅路のことを「天城越え」と呼び、川端康成の「伊豆の踊子」のテーマになるなど物語の舞台としても取り上げられるようになりました。近年では石川さゆりさんの代表曲「天城越え」が毎年のように紅白歌合戦で歌われており、「天城越え」を聞かないと年越しできないという声が聞かれるほどの名曲になっています。

♪あまぎぃ~ごぉ~え~~~~

…と気持ちよく謳っていたら滝に来ていました。この滝は「浄蓮の滝」。石川さゆりさんの「天城越え」で歌われたことで一躍有名になった名滝です。滝壺の青さは水が澄んでいることの証拠ですね。かつては人の近づけない難所だったそうですが、1906年に遊歩道ができて以降観光地として整備され、今ではドライブインなんかもできて気軽に滝の近くまで行けるようになりました。周囲に柱状節理が見られることでわかるように、この滝は火山の噴火で流れ出た溶岩が川になだれ込んだことでできた滝です。

滝の前には「天城越え」の歌碑があります。やはりこの滝は石川さゆりさん抜きで語ることはできないですね。天城越えほどの苦難も(不倫相手である)覚悟を決めてあなたと一緒に超えてゆきたい。女の情念がこもった歌ですね。そんな天城越え、わたしは孤独に一人でさくっと行ってしまいましたが。

浄蓮の滝のすぐそばではわさびが栽培されていました。水がきれいだということが改めて分かりますね。川の方では渓流釣りも楽しめるそうです。

浄蓮の滝の入り口には川端康成の「伊豆の踊子」の像が立っています。これからもいくつか「伊豆の踊子」像を見ることになるのですが、ここの銅像の主人公、とくに踊子「薫」の方は若く子供のように見えます。原作の「薫」は数えで14歳。この像のように子供っぽいほうが原作に忠実なのかなと思いました。大人びたイメージのある山口百恵さんが映画「伊豆の踊子」で主演をした時も彼女は15歳だったわけですしね。ちなみにこの映画、石川さゆりさんも出演しています。このころから「天城越え」には縁があったんですね。

浄蓮の滝の銅像より大人びた印象のある薫。背丈がだいぶ違うような…。

河津七滝を目指す道中休憩がてら寄り道した浄蓮の滝でしたが、なかなか見ごたえのある滝でした。それでは天城の山中、Amazon Musicで石川さゆりを聞きながら河津七滝目指してもうひとっ走りドライブしたいと思います。

♪あまぎぃ~ごぉ~え~~~~(もういい)


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。