営業チラシを「重要書類」として送る金融機関のセンス

金融機関から、毎日のように様々な書類が郵送で送られてきます。10以上の金融機関と取引があるので、大量の郵便物の開封をして中身の確認をするだけでも結構手間がかかります。

旅行で数日間留守にしたりすると、郵便物が50通以上溜まることもあります。

金融機関から送られてくる書類の中で重要なのは、資産の状況を示す取引残高報告書、クレジットカード会社の利用明細、そして銀行からの借り入れの状況を示す返済予定表といった書類くらいです。

それ以外の郵送物に目を通す事はほとんどありません。

最近よく送られてくるのが、新しいカードや金融商品の案内です。

最近送られてきた郵送物の中に、広告宣伝の営業チラシなのに、封筒の表面に赤字で「重要」と書いている金融機関がありました。

重要という表記を見て、何かと思って開封すると、中には日本の大手自動車会社が発行するドル建社債の勧誘資料が入っていました(写真)。

開封されず、そのままゴミ箱行きになるのを避けようとして、こんな表記をしているのだと思いますが、これはビジネスマナー違反ではないでしょうか?

せめて「大切なお知らせ」といった表現にとどめるのが、取引の際の常識でしょう。

このように金融機関には、ビジネスセンスを疑うような行動をすることが珍しくありません。

私も以前は金融機関で仕事をしていたので何となくわかりますが、顧客対応よりも金融庁やコンプライアンス対応の方が大切だと思っているのです。サービス業としての体をなしていない、未だに「士族の商法」を続ける令和の化石です。

営業目標の達成のためのチラシは、販売する側にとっては「重要書類」なのかもしれません。しかし、私には重要どころか必要のない情報でした。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年2月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。