パリ国立オペラ座、オッフェンバック「ホフマン物語」、ロベール・カーセン演出。
2000年にここで初演された、カーセンのそれはそれは素晴らしい演出。大好きなカーセンの中でも、この作品はとびきり。数年ごとに再演される大人気作品。私も今回で3回目か4回目。
初めて見た時、スタート前の演出&照明、劇場シーンの見せ方と動かし方、そこから酒場への舞台転換だけで夢中になったし、なによりも4幕冒頭の耽美で退廃な美しい劇場シーンがヴェネツィアのイメージにピッタリでうっとりした。
空間の上下左右をたくみに使った広げ方、カーセン、ほんっと上手。そして、現実世界の絶妙な組み込み方や笑いのセンスも、私はツボ。
前回か前々回はカウフマン登場予定が(もちろん)キャンセル。泣きながら代役観に行ったけど、演出が良すぎるので満足したの覚えてる。
そして今回のホフマンは、バンジャマン・ベルネーム(ベルナイム)!最高~♪
大好き演出で、歌の割合たっぷりのフランス作品をベルネームで聴ける、この上ない幸せ。ワクワクマックスで赴いたオペラ・バスティーユで、最高のホフマンにうっとり感動の3時間半。
ベルネームの、繊細に震えるような、抒情に満ちてまろやかで伸びのある声、ほんと好き。カウフマンもロマンティックだけどベルネームよりほんの少し影がある。だからワーグナーできるのでしょうね。ベルネームは、どこまでも優しくロマンティック。その上、なんともチャーミングな声の表情で、1幕酒場シーン、顔の演技も含めて最高。
ソプラノ3人は、オランピアのイェンデがその演技も含め(ちょっとトゥーマッチに感じたけれどあれくらい振り切るのもありなのかもね)一番の喝采。個人的には、ソプラノ3人揃&ミューズのメゾも、可もなく不可もなく。逆に、男性脇役二人はなかなか。でもまぁ、とにもかくにもベルネームがあまりに素晴らしすぎるので、正直全員霞む。
オケ&指揮は、普通(カーテンコール、オケだけは”ブー!”も聞こえた)。”歌主体のオペラだからそれほど気にはならないですねー”と知人に言うと、”いや、よいオケ&指揮者だと歌との融合が素晴らしいんだけどねぇ”とのこと。確かに、以前ジョルダンが振った時はもう少し音楽にもうっとりした記憶が。
カーテンコール、ベルネームへの拍手とブラヴォで巨大なオペラ・バスティーユが揺れる。私も夢中で拍手拍手。あー、観られてよかったー。数日前は、演奏会形式になったそうだし、「くるみ割り人形」は初日も2日目も中止になり、相変わらず不穏なパリオペラ座の冬。
ベルネーム、ここ数年、マノンやファウスト、ロメオ&ジュリエットなど、フランスオペラに登場してるのに、チケット買えなかったりタイミング悪かったりで全然観られていない。来シーズンはどの作品で来てくれるのかしら。必見&必聴(インスタに、カーテンコールの動画あります)。
編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2023年12月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。